研究課題/領域番号 |
22K19733
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
森 勝伸 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (70400786)
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研究分担者 |
大嶋 紀安 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30360514)
CHALECKIS ROMANAS 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40778289)
上田 忠治 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (50294822)
和泉 孝志 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 教授 (70232361)
久島 達也 帝京平成大学, ヒューマンケア学部, 教授 (80418590)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ストレス緩和 |
研究実績の概要 |
本研究では、総体的解析手法を用い、電気鍼刺激による脳血流に伴って変動する唾液の成分から指標となる物質を見出し、鍼治療とストレスとの関係を明らかにする。 研究項目として、1)鍼刺激前後で変動する脳血流と強い相関を示す唾液成分から指標物質を絞り込む、2)指標物質の発生機構を、脳神経学・生理学・免疫学の知見から幅広く調査し、ストレスとの関係を明らかにする、3)指標物質の濃度を軸に、鍼治療によって得られるストレス緩和の機構を示す。 今年度は、電気鍼療法の条件設定(対象とする人数・年齢・性別、唾液採取・問診のタイミング等)、唾液の比重分析の設定、唾液の成分分析、統計解析(各唾液成分の濃度変動の比較、脳血流との関係性)を目的に検討を進めた。 電気鍼刺激試験で研究協力者から唾液試料を採取するために、高知大学倫理審査委員会に申請書を提出し、2023年3月末に完了した。その申請期間中に、唾液の成分分析方法の最適化並びに統計解析方法の探索を行い、電気鍼刺激試験に向けたプロトコールの作成を行った。しかし申請期間中は、電気鍼刺激に関する試験を実施できないことから、プレ試験として寒冷昇圧試験(10℃程度の水に両手を一分間つけて、血圧上昇やストレス負荷の度合いを調べる試験)を実験者が行い、イオン成分の分布や紙媒体でのストレスチェックを行った。これを基に、次年度の試験で利用するプロトコールを作成し、グループ内で議論を交わし、修正を行った。唾液成分の分析方法についてはおおむね定まっており、次年度での本格的な研究を開始する準備は整っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)唾液分析:〇唾液輸送に関連するイオンをキャピラリー電気泳動(CE)によって分析できるシステムを構築した。〇冷水刺激(寒冷昇圧試験)前後によってイオン濃度がどのように変化するのかを調べ、有意に変動するイオンの存在が確認した。〇唾液中のアルカリ金属とアルカリ土類金属イオンの濃度については、測定機器によってばらついており、その補正方法を検討する必要がある。〇唾液の比重補正は、液体クロマトグラフィー(LC)と示差屈折検出器(RI)を組み合わせたLC-RI法を用いることで高効率に行うことができた。〇電気化学手法を利用し抗酸化物質を測定するための作用電極の選択、試料溶液の最適化を行った。結果的に外気に触れると抗酸化物質が変位したり、タンパク質マトリックスの影響を強く受けたりすることがわかった。〇LC質量分析による唾液中のタンパク質の分析では、まずその分析装置に導入するための試料前処理と分析装置の基礎的操作を習得した。 (2)解析・機構解明:〇高知大学倫理審査の申請に時間を要したため、電気鍼刺激試験は実施されなかった。〇プレ試験として寒冷昇圧試験を実験者が実施し、そのときの唾液中の成分分析を行った。〇統計解析(主成分分析)により、冷水刺激に伴って有意に変動するイオンを見出した。 以上、1年目では、分析方法の最適化はおおむね順調に進展したが、電気鍼刺激試験が実施できなかったことやプロトコールの見直しが必要であったことから、「(3)やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高知大学での倫理審査の通過により、前年度実施できなかった計画を含め、下記の推進方策を計画している。 (1)プロトコールの作成:〇前年度末、プレ試験(寒冷昇圧試験)の実施に基づき、電気鍼刺激試験でのプロトコールを作成したが、唾液試料の採取タイミング、分析方法や解析手順について、本研究グループから見直しを求められてたので、早急に解決する。〇唾液試料の電気化学分析については、本実験担当の大学院生を6月から8月の間にオーストラリア・モナッシュ大学に派遣し、Dr. J. Zhangの指導の下、マトリックスを多く含む唾液の電気分析手法に開発に資する基礎資料を獲得する。 (2)電気鍼刺激試験:鍼灸刺激前後に伴う唾液中の有機・無機物質の濃度変動を調べ、電気鍼刺激前後の脳血流の変化との関係を、イオン、タンパク質、有機酸等の濃度変化から網羅的に調べる。 (3)指標物質の抽出:(2)の結果とともに問診や文献等も1つのデータセットとして取り込んだ統計解析を行い、指標物質を抽出する。これより、科学的知見が不明確である鍼治療とストレス緩和効果の関係を、生化学的挙動と神経基盤への作用による指標物質の濃度変動といった客観的な数値から明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
【理由】高知大学での倫理審査に時間を要し、電気鍼刺激試験が実施できなかったため、実施経費、分析機器使用料、旅費を消費することができなかった。今年度は、倫理審査も通過し、分析方法も確立したことから、繰り越された経費を下記のように使用する。 【使用計画】(消耗品費)プロコールの見直し関する実験や分析装置の消耗品に使用する試薬、フィルター、器材等、ならびに電気鍼試験に使用する鍼や唾液の採取キット一式に充てる。(旅費)帝京平成大学、群馬大学、名古屋市立大学において、それぞれ唾液採取とオンサイト分析、タンパク質分析、比重分析を行うために必要な旅費にあてる。(謝金)実験参加者に対する謝礼にあてる。(その他)群馬大学のLC-MS/MS、高知県工業技術センターでのICP-MS等の利用経費と、高知大学のクロマトグラフの機器管理費に充てる。
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