研究課題/領域番号 |
22K19737
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
大滝 博和 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (20349062)
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研究分担者 |
康 徳東 昭和大学, 医学部, 講師 (00571952)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | Pin1 / 神経変性疾患 / 老化 / ミクログリア / 神経炎症 |
研究実績の概要 |
当該研究は,老化に伴い増大するマウス視床の凝集体の本体とその凝集様式を明らかにす ることにより,難治性疾患である筋硬直性ジストロフィーのエオシン陽性視床封入体の実体を解明することと疾患進行に至る神経機能変容を理解することを目的として計画した.この目的を達成するために,(1)プロリンcis/trans異性化酵素(pin1)の遺伝子欠損マウス(KO)を用いベータアミロイド抗体陽性非膜オルガネラの実体の解明,(2)非膜オルガネラの形成過程の解明および(3)筋硬直性ジストロフィーのエオシン陽性視床封入体の実体を解明することと疾患進行に至る神経機能変容を患者の視床封入体の実体の解明をマイクロダイセクションとLC-MS/MSの組み合わせたプロテオミクス解析を中心に行う。応募者は,pin1 KOが老化伴い視床の神経細胞の細胞質にベータアミロイド抗体陽性凝集体を増大すると認めている。その凝集体は液-液相分離が形成に深く関わる非膜オルガネラの特徴を有する。更に筋硬直性ジストロフィー患者のエオシン陽性視床封入体がマウスの凝集体と病理組織学的特徴が一致することを見出している。このように当該研究は応募者の予備的研究結果をもとに見出され,pin1 KOによる凝集体の本体と形成過程を明らかにすることによりDMの視床封入体や神経機能の変容による病態の進展を明らかにしようとする萌芽な挑戦的研究である。当該年度は視床のこの封入体が神経変性疾患等の病態と関連しているか示唆するために経日的にその領域のグリア細胞の免疫染色を行った。野生型マウスは日齢に従いミクログリアおよびアストロサイトの免疫陽性が増加し加齢に従うグリオーシスが認められた。しかし,Pin1 KOは150日齢では野生型に比べ免疫陽性反応の有意な増加を認めたが加齢に伴う変化は一様ではなく,高齢になるに従い野生型より低くなることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視床にアミロイド蓄積する封入体の役割を示唆するためにグリア細胞の染色を行い,蓄積が顕著になる前の150日齢で既に有意にグリオーシスが増加していることが示唆され蓄積に先立って何らかの障害が生じている可能性を示唆した。
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今後の研究の推進方策 |
既年度の試験により,予想に反してPin1 KOのグリーシスがアミロイド封入体の蓄積と一致しなかった。そして老化に伴い野生型と逆転する傾向が見られた。これは細胞質内に蓄積するアミロイド封入体は神経炎症の進展を抑制しているのではないかとの可能性を見出した。今後炎症との関連を調べ封入体の役割を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年度の代表者の所属の変更により予定通りの研究が遂行できなかった影響で本年度の遂行状況が悪かった。また,研究環境の変化により予算消化に影響が出た。
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