自己免疫疾患は関節リウマチなど多種多様な疾患を含む。発症要因は複雑で疾患毎に異なり、多くは根治療法がなく、ステロイドや免疫抑制剤による対症療法が中心となる。ブチリカム菌は整腸剤として使用されており、制御性T細胞の誘導活性も有することから自己免疫疾患治療用のプロバイオティクス(機能性腸内細菌)として利用できる可能性がある。T細胞の免疫応答は病原体排除に重要な役割を担っており、非特異的な制御性T細胞の誘導はステロイドや免疫抑制剤と同じく感染症のリスクを高める。そこで、本研究ではブチリカム菌に自己免疫性疾患に関連する自己抗原を発現させ、抗原特異的な制御性T細胞を誘導することにより、自己抗原に対する過剰免疫応答をのみを抑制する手法を確立することを目的とした。実験的自己免疫性脳脊髄炎における刺激抗原であるMOGペプチドとブチリカム菌のcell wall binding motifが融合したタンパク質が細胞壁表層に発現させるよう遺伝子を改変し、シャトルベクターへクローニングした。抗MOG抗体を用いたWestern blottingと免疫染色により、MOGペプチドを細胞壁表層に提示するブチリカム菌を作製することに成功した。このブチリカム菌をC57B6マウスに経口接種し、経時間的に便培養により定着率を評価した結果、経口接種では十分な定着が確認できなかった。プロバイオティクスとしてのブチリカム菌の腸管内定着や酪酸産生を促すプレバイオティクスの開発が今後の課題である。
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