研究課題/領域番号 |
22K19754
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
絹川 真太郎 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60399871)
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研究分担者 |
松島 将士 九州大学, 医学研究院, 助教 (80552869)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | サルコペニア / 翻訳語修飾 / O結合グリコシル化 / 健康寿命 |
研究実績の概要 |
本研究は加齢における骨格筋萎縮の進展にタンパク合成や分解に関わる種々のタンパクのO-GlcNAc化修飾が重要な役割を果たしていることを明らかにすることであった。まず、加齢マウス(3-18か月齢)から骨格筋を取り出し、実験を行った。12か月齢ころより、骨格筋萎縮(骨格筋重量減少、骨格筋細胞径縮小)が観察され、18か月齢では有意に骨格筋萎縮が起こった。タンパク合成系の鍵分子であるAktのリン酸化が低下し、同時にmTORのリン酸化も減少した。一方、分解系のユビキチンリガーゼであるAtroginやMurfタンパクは増加した。O-GlcNAc化は骨格筋抽出タンパク全体では、12か月齢ころから増加する傾向があり、18か月では有意に増加した。しかしながら、分子量毎にO-GlcNAc化の増減に違いがあった。現在、O-GlcNAc化修飾を受けたタンパクを質量分析法で解し、O-GLcNAc化が増減したタンパクを同定中である。O-GlcNAc化制御機構であるヘキソサミン生合成経路の評価では、骨格筋におけるGFAT1やGFAT2が増加したが、この結果は骨格筋抽出タンパク全体でのO-GLcNAc化増加と一致した。 次に、C2C12骨格筋培養細胞を用いて、骨格筋萎縮とO-GlcNAc化修飾との関連を検討した。GFAT抑制薬である6-Diazo-5-oxo-L-norleucin(DON)をC2C12培養細胞に添加したところ、O-GlcNAc化は増加した。この時、Aktのリン酸化は低下し、AtroginやMurFタンパクは増加した。この実験において、C2C12培養細胞の形態変化(細胞径の縮小)が観察されるかどうかを解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はおおむね当初計画の予定通りの進捗状況であった。当初予定であった萎縮モデルにおいて質量分析によるO-GlcNAc化修飾を受けるタンパクの同定が未決定であるが、すでに解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は次の2点を明らかにする。まず、O-GlcNAc化制御による骨格筋萎縮に対する効果を検証する。12か月齢マウスへGFAT(ヘキソサミン生合成経路の律速酵素)抑制薬であるDONを3か月間投与する。また、OGAの抑制薬であるO-(2-acetamido-2-deoxy-D-gludopyranosylidene) amino-N-pheylcarbamate(PUGNAc)を3か月間投与する。これらの薬剤の骨格筋に対する作用を検証する。次に、新規特異的O-GlcNAc化制御薬のスクリーニングと治療効果を検証する。C2C12培養細胞に蛍光標識した抗O-GlcNAc抗体を投与し、蛍光強度を測定することにより、O-GlcNAc化検出アッセイを確立する。創薬等先端医術支援基盤プラットフォームを活用し、約1200種類の既存薬剤ライブラリを用いてO-GlcNAc化を抑制する薬剤をスクリーニングする。さらに、これまでに明らかとなった骨格筋萎縮と関連するタンパクのO-GlcNAc化を抑制する薬剤をスクリーニングする。同定された薬剤を用いて、加齢における骨格筋萎縮に対する効果を検証する。
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