研究課題/領域番号 |
22K19762
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
木村 展之 岡山理科大学, 獣医学部, 教授 (80392330)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | バイオマーカー / 老化 / 高等霊長類モデル |
研究実績の概要 |
申請時の計画通り、性成熟を終えた健康な若齢(3歳以上10歳未満)・成熟齢(10歳以上20歳未満)・Ⅱ型糖尿病や高脂血症等、老年性疾患(変化)が確認される中高齢(20歳以上30歳未満)・アルツハイマー病変の形成が確認される老齢(30歳以上)の合計4群(総計14頭)のカニクイザルを用いて老化の指標となる新たな血液バイオマーカーの探索を行った。 まず、上記カニクイザルに由来する血漿からショ糖濃度勾配法を用いた超遠心分離によって細胞外微小胞(EV)を回収したところ、老化に伴い血漿中のEV総量が大幅に増加することが明らかとなった。このことから、EV総量の変化自体が老化の指標となる可能性が示唆され、ヒトにおいても同様の変化が確認されるかが今後の検討課題である。 続いて、上記手法によって回収したEVを用いてプロテオーム解析を行ったところ、血液由来と考えられる蛋白質を除外したうえで、老化に伴い増加する蛋白質が4種類、老化に伴い減少する蛋白質が8種類同定された。将来的に特許申請の可能性があるため、現時点では詳細な名称は控えたいが、生殖機能に関連する蛋白質が複数同定されており、生殖器細胞から分泌されたEVが血中に分泌されていることが示唆された。また、アルツハイマー病発症と強い関連性を有する脂質代謝関連蛋白質も同定されたことから、より早期のアルツハイマー病バイオマーカーとなる可能性も期待できる。今後、これら老化関連分子の機能についてより詳細な検索を行うとともに、ヒト血漿でも同様の変化が再現されるか否かを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カニクイザル血漿から回収した細胞外微小胞(EV)を用いたプロテオーム解析は計画通り順調に遂行することができ、老化に伴い変動する因子の同定にも成功した。また、EV総量そのものが老化に伴い増加することを発見したことから、より普遍的かつ簡便な老化バイオマーカーの確立にもつながる可能性が示唆され、本研究計画は当初の計画通り進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの検索により得られた結果がヒトでも同様に確認されるか否かを検討するとともに、EV回収方法に少し改善を加えて再度挑戦する予定である。その理由としては、今回のプロテオーム解析では血液由来蛋白質がかなり混入しており、老化に伴い変化する細胞外微小胞(EV)局在性蛋白質の解析に影響を及ぼしている可能性が否定できない。そこで、血漿から回収したEVを免疫沈降によって精製したうえで再度プロテオーム解析を行い、より正確なデータを得たいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験ノートの作成等に必要な文房具消耗品を発注したところ、運悪く欠品していたために発注を完了することができませんでした。
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