研究課題/領域番号 |
22K19764
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
滝沢 寛之 東北大学, サイバーサイエンスセンター, 教授 (70323996)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | ジョブスケジューリング / 高性能計算システム / デジタルツイン |
研究実績の概要 |
本研究では、実運用システムのジョブスケジューラを忠実に模擬するデジタルツインを開発している。ジョブスケジューリングを模擬するシミュレータはすでに多数開発されているが、デジタルツインと呼べるほどには実運用システムの挙動と一致しないことが事前の検討で分かっている。令和5年度には、実運用システムである東北大学スーパーコンピュータAOBAの増強が行われ、そのシステム構成が大きく変わった。このため、模擬すべき実運用システムの挙動を明らかにするために、AOBAに新規追加されたAOBA-Sサブシステムの詳細な性能評価を行うとともに、利用状況の把握とその模擬の課題を明確化した。実運用システムの利用状況は様々な要因によって変化することから、そのような運用面の変化や制約に対応するジョブスケジューリングやそれを模擬するための研究開発を行った。アクセラレータとそのホストプロセッサなど、異種複数のプロセッサが連携してアプリケーションを実行するシステム構成が、AOBAの中核となるSX-Aurora TSUBASAを含むスーパーコンピュータのシステム構成として一般化している。ただし、どちらか一方しかほとんど利用としないアプリケーションもあり、その場合にはそれぞれのプロセッサで別のアプリケーションを実行することでシステム全体としての性能を高めることができる。しかし、アプリケーション間で共有している計算資源もあるために、干渉によって性能が低下する恐れがある。そのため、性能干渉の少ないアプリケーションの組合せを予測する研究を行い、その成果が学術論文として採録された。アクセラレータとそのホストプロセッサとの性能干渉など、複数ジョブ間で一部の計算資源を共有している場合にその性能干渉を正確にモデル化することは、実運用システムを忠実に模擬するために重要であることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジョブスケジューリングシミュレータの機能拡張が進んでおり、それを用いたジョブスケジューリング手法の研究でも数多くの成果を残すことができた。また、ジョブスケジューリングを忠実に模擬するための技術的課題も明確化しており、本研究課題全体としておおむね順調に進展していると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
AOBAの中核となるSX-Aurora TSUBASAで、搭載されている2種類のプロセッサのそれぞれで別のアプリケーションを実行する運用が求められている。これは令和6年度に放射光施設NanoTerasuの運用が開始し、AOBAの利用者の傾向が変化することが予期されているからである。そのような運用上の方針検討に資するデジタルツインを構築することで事例研究とし、本研究の成果をまとめることを考えている。異種プロセッサ間やジョブ間の性能干渉のモデル化や予測を行い、さらには利用者の動向まで予測するためにはデータ駆動型のアプローチが必要不可欠である。このため、現在は機械学習を用いたより精度の高い予測手法を検討しており、今後その成果を対外発表していくことを計画している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
共同研究者が2022年度に予定していた海外出張が新型コロナウイルスの影響でキャンセルとなり、その繰越の影響で差額が生じている。2024年度は最終年度であるため積極的な対外発表を予定しており、その結果として期間全体の総額としては当初の予定どおりに支出することを計画である。
|