研究課題/領域番号 |
22K19780
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
中野 賢 大阪公立大学, 大学院情報学研究科, 教授 (70571173)
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研究分担者 |
小林 昇平 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所神戸フロンティア研究センター, 研究マネージャー (40425765)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 情報ネットワーク / 細胞塊 / 細胞ICT |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、細胞を用いたICTデバイスの開発に資する細胞塊ネットワーク構築技術を確立することである。細胞塊とは、細胞が元来もつ細胞接着能を利用して形成される細胞の三次元集合体である。細胞単体の信頼性は低く、細胞単体で高度な機能を実現することは難しい。しかし、細胞どうしが接着した細胞塊や、細胞塊どうしを相互接続した細胞塊ネットワークは、信頼性のある高度な機能を実現できる。例えば、いくつかの細胞塊が特定の分子信号を検出することで環境情報を収集し、別の細胞塊は収集された環境情報を集約したり、集約された情報にもとづき特定の薬剤を産生したりして、ネットワークを構成する細胞塊が必要な仕事を分担できる。本研究によって細胞塊ネットワーク構築技術を確立することにより、新しいICTデバイスの開発が可能になると考えられる。
初年度となる2022年度には、予備的な細胞塊観察実験、細胞塊の数理モデルの構築、および、計算機実験を行った。予備的な細胞塊観察実験においては、HeLa細胞を用いて細胞塊を形成し、単一の細胞塊が成長したり収縮したりする過程や、複数の細胞塊が相互作用し、融合する過程をタイムラプスイメージングによって観察した。得られた結果を分析し、細胞塊の成長や収縮、細胞塊間の相互作用について理解を深めた。数理モデルの構築、および、計算機実験においては、単純な力学モデルを用いて、細胞塊が成長、収縮、融合する過程を計算機上に再現することを目指し、モデルパラメータの調整を行った。また、初年度に得られた成果を取りまとめ、国際会議 (BICT 2023)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いた予備的な細胞塊形成実験、細胞塊形成の数理モデルの構築、および、計算機実験を行うことができた。また、得られた成果を国際会議で発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
細胞生物実験および計算機実験をさらに進める。細胞生物実験においては、細胞の初期密度、培養温度・時間等の条件が形成される細胞塊の特性に与える影響を分析し、所望の特 性をもつ細胞塊を形成できるようにする。計算機実験においては、開発した数理モデルによって、単一の細胞塊が成長する過程や、複数の細胞塊が相互作用する過程を再現できるか検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使用する機器の選定に時間を要し、予定していた実験の一部を実施できなかった。実験に必要な試薬等を全て購入しておらず次年度使用額が生じた。次年度使用予定額および今年度の請求額は、実験研究に必要な試薬および消耗品のほか、対物レンズの購入、理論研究に必要な計算機の購入、学会発表のための旅費などに使用する。
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