研究課題/領域番号 |
22K19792
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
榎堀 優 名古屋大学, 情報学研究科, 講師 (60583309)
|
研究分担者 |
間瀬 健二 名古屋大学, 数理・データ科学教育研究センター, 教授 (30345855)
吉田 直人 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 助教 (40836714)
米澤 朋子 関西大学, 総合情報学部, 教授 (90395161)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | 感性伝達 / 伝統的工芸品 / 価値判断基準分析 / 感性背景分析 / 地域間比較 / 文化間比較 |
研究実績の概要 |
本研究は,伝統的工芸品をはじめとする製品・作品の真の価値である,受け手の感受性や受け取り方に依存する価値である「感性価値」について,如何に情報工学的アプローチで伝達可能とするかを追求する. 研究計画立案当初からの変遷により,本課題は下記の3視点から推進している.(1): 茶筒の開缶時の圧力値変化の統一によって利用者が受ける感触を統一し,そこから受ける感覚の関係に付いて分析する.(2): (1)によって計測される利用者が受ける感覚を,文化背景などの感性背景が異なる人物間で比較し,感性背景と受ける感覚の関係について分析する.(3): 作り手や利用者の良悪判断結果を学習した深層学習機の中間層可視化結果比較などから,それぞれの感性判断基準について明らかにする. R5年度は(3)について堅実な進捗が得られた.また,(1)および(2)について議論を深め,方針変更および変更後の実験計画を策定し,プレ実験などを開始した. (3)において,朝日焼の焼き物のデータを2回の拡充した.また,新データを加えて深層学習機の再評価し,改めて一般的な深層学習機より高い精度を達成した.また,構築した深層学習機が9年目の徒弟による評価より高い精度を示すことも明らかにした.R6年度も引き続きデータを拡張すると共に,より精度の高い深層学習機の構築や,その中間層可視化などによる感性判断基準の解明を進める. (1)および(2)は地域別に被験者を募集するだけでは十分な感性背景差が生まれない可能性が示唆され,実施方針について再検討した.結果,試技の前に感性背景を励起する動画を提示し,一時的に感性背景値を変化させる方針とした.地域別で実験し,地域別の感性背景差の分析余地も残す.動画の選定と動画で励起される感性値を確認するプレ実験を開始しており,結果をR6年度の活動に反映する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
テスト当初計画になかった項目(3)において,作品画像を用いた良悪判断識別機を用いた感性判断基準の解明に向けて着実な進捗がある.データ数の拡充および識別機構築に関する知見が積み重なり,識別機は9年目の徒弟による評価よりも高い精度を達成した.項目(1)および項目(2)において,地域別に被験者を募集するだけでは十分な感性背景差が生まれない可能性が示唆された結果,実施方針について再検討を行った.これにより進捗は停滞したが,内容は高度化・低リスク化した.総合的に見て当初計画部分は全体進捗としては問題なく,追加部分を含めて想定より進んでいると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
茶筒の開缶動作時の受動感触統一による受動感性値の分析については,再検討した結果を基に,試技前に提示する感性背景励起のための動画の評価(プレ実験),地域ごとの被験者募集に基づく,地域間差の検討余地を残した拡張実験と進めていく.作品画像を用いた良悪判断識別機を用いた感性判断基準の解明においては,データ量を積みますと共に,中間層可視化による感性判断基準の起因分析を進める.
|
次年度使用額が生じた理由 |
茶筒を用いた受動感触統一による受動感性値の分析実験について,前述の懸念(地域別に被験者を募集するだけでは十分な感性背景差が生まれない可能性)によりR6年度へ延期した結果,残額が生じた.これについては,R6年度において,元の実験を拡張した実験を行う予定であり,最終到達点は高くなると予想され,問題ないものと考える.
|