ノイズを与えることで触感覚を向上させる、既存の確率共鳴を用いた指先触感覚向上法には、その向上に限界があった。十分大きなノイズを付与すれば感度は良くなるが、ノイズ付与部で知覚できるほど大きなノイズを与えると、人の注意が付与部に向くため、指先触感覚は逆に低下する。本申請課題の目的は、ノイズ付与部である手首の感度を低下させ、人の注意を引かずに大きなノイズを付与することで確率共鳴現象の強化を試みることである。そして、指先触知覚を高感度化させる手法を構築することである。特に本年度は、指先触感覚の高感度化手法の実現可能性について検討を行った。 申請者は、前年度において、ノイズ付与部である手首を冷却することで、人の注意を引かずにノイズ提示部である手首部に大きなノイズを付与できることを明らかにした。当該年度においては、このように人の注意を引かずに大きな機械ノイズを付与することで、確率共鳴現象が強化されることを検討した。具体的には、複数の被験者に粗さ知覚実験を行ってもらい、より高感度に知覚実験を行えること、すなわち、指先触感覚の高感度化手法が実現でることを明らかにした。また、これまでは手首の冷却は保冷剤を用いて行っていた。この冷却を効果的に行えるよう、フィードバック制御機能をもたせた手首部冷却装置の開発も併せて行った。この装置を用い、手首部知覚感度低下を用いた指先触感覚を高感度化するシステムの開発を検討した。
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