研究課題/領域番号 |
22K19812
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
井野 秀一 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授 (70250511)
|
研究分担者 |
土井 幸輝 同志社女子大学, 生活科学部, 准教授 (10409667)
細野 美奈子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (70647974)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | 水素吸蔵合金 / ソフトアクチュエータ / ヒューマンインタフェース / QOLテクノロジー / 異分野融合 |
研究実績の概要 |
本研究では、人と環境に優しい力生成の機能性素材として水素吸蔵合金を活用し、伝統的な製紙技法と先端的な水素バリア技術などを探索的にミックスし、日常の生活環境に溶け込むQOL(Quality of Life)テクノロジーのための形状自在・軽量ソフトアクチュエータ(薄型・高出力モーションデバイス)の研究開発に取り組んでいる。さらに、「福祉・医療」×「ものづくり」の現場連携に立脚した研究プラットフォームを構築し、「マテリアル科学」×「ヒューマンインタフェース」の萌芽的な融合研究を展開している。本年度は、初年度であることから、ソフトアクチュエータの力生成の心臓部である水素吸蔵合金ペーパーの各種調査および合金容器の基礎設計に関連した熱解析シミュレーションなどを行った。その結果、合金の応答特性に容器材料が与える影響は比較的小さく、熱源と合金容器の接触面積を拡張することによる力生成の応答に対する優位性が示された。また、形状自在・軽量・薄型なソフトアクチュエータの福祉応用として期待されるガード型点字ディスプレイの設計指針を得るための基礎研究として、点字の触察動作における手指の力学的挙動と知覚特性を人間工学実験により調べた。その結果、触読時の点字に対する示指の接触力の方向と大きさは斜め下方に約1Nであることがわかった。また、点字の高さと読みやすさの関係には個人差があることも示された。その他では、しなやかな伸縮駆動を実現するためのフレキシブル素材などに関する検討も進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本課題の初年度であることから、ソフトアクチュエータの新技術開発の土台となる水素吸蔵合金とその基盤技術の研究開発を主軸に進めた。具体的には、水素吸蔵合金の容器を含めた応答特性の改善、製紙技術を用いた水素吸蔵合金のシート化の設計、日常の生活環境との親和性を考慮したフレキシブル素材の選定などに取り組んだ。さらに、本課題の中盤から順次に実施予定である「福祉・医療」×「ものづくり」の応用展開への一部着手を少し早めて、カード型点字ディスプレイの設計指針を得るための触覚に関する人間工学実験を行った。以上より、基盤技術の研究推進に加えて、応用技術(福祉系)に関連した人間工学研究の展開にも首尾よく進んだことから、概ね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に引き続き、ソフトアクチュエータの新技術開発を基盤要素研究(形状自在の水素吸蔵合金ペーパーの設計、シート化に適した合金レシピの探索、伸縮駆動系のフレキシブル素材の検討など)に基づいて深化させ、従来の高分子アクチュエータや空気圧人工筋とは仕組みの異なる新生の形状自在・軽量のソフトアクチュエータのプロトタイプ開発を進める。また、「福祉・医療」×「ものづくり」の異分野融合での応用展開(機器デザイン)に向けた水素吸蔵合金アクチュエータの人間工学研究を漸次展開する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、研究分担者および研究協力者との研究打ち合わせに伴う旅費が(新型コロナウイルス感染対策を含む)オンライン会議の活用により少なく抑えられたことが挙げられる。また、初年度ということもあり、技術開発の調査やシミュレーションなどに精査を要したため、物品費は予定より抑えられ、人件費・謝金等も生じなかった。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画としては、研究分担者および研究協力者との研究打ち合わせに伴う旅費、国内外の学会および研究会等での成果発表、水素吸蔵合金ペーパーの試作、合金ペーパーを用いたソフトアクチュエータの開発、それらを組み込んだ機器デザインのための人間工学実験等で必要となる物品費および謝金等の経費に充てる予定である。
|