研究課題/領域番号 |
22K19819
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
西田 知史 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター, 主任研究員 (90751933)
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研究分担者 |
宮原 克典 北海道大学, 人間知・脳・AI研究教育センター, 特任講師 (00772047)
新川 拓哉 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (20769658)
濱田 太陽 株式会社アラヤ(研究開発部), 研究開発部, リサーチャー (40842258)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | リアリティ / 自然さ / 認知 / 脳 / AI / 質的研究 |
研究実績の概要 |
リアリティ欠如に伴う認知的変容の探求を脳活動レベルと主観的経験レベルで実施した。脳活動レベルの探求では、リアリティ欠如を引き起こす統制の取れた感覚刺激の提示が難しかったため、映像を視聴している際の脳活動を、現実的な状況である自由視条件と、非現実的な状況である固視条件を比較することで、代替の検証を行った。各条件で脳活動の被験者間同期を分析し、その度合いを条件間で比較した。自由視条件では眼球から入力される局所的な視覚情報が刻一刻と変化するため、視覚野の被験者間同期が著しく下ると予想するのが自然である。しかし、結果としては、鳥距溝周辺のごく一部でのみ同期が低下する傾向が見られた一方で、自由視条件で同期が上昇する脳領域が広く見られた。特に楔前部を含む後頭皮質内側部で顕著な同期の上昇が確認できた。以上の結果は、自然な状況であるほど、脳活動の安定性が向上することを示唆している。 また、主観的経験レベルでは、AIが生成した顔画像と実在の顔画像を識別する課題中に、主観的経験を詳細に取り出す現象学的インタビューを実施した。それによって得られた主観的経験に関する言語報告から、リアリティ欠如が経験にもたらす変容の分析を試みた。インタビューで集めた言語報告に対して、質的研究で標準的に用いられるグラウンデッド・セオリー・アプローチ分析を適用し、顔画像にリアリティ欠如を感じるときの認知的要因をあぶり出した。その結果、表情や視線の不自然さ、過度な綺麗さなど、様々な要因がリアリティの欠如をもたらしていることが分かった。今後は、得られた知見を基に、そのような認知要因の脳内表現を調べるための脳計測実験に発展させることを予定している。
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