研究課題/領域番号 |
22K19821
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 茂雄 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (10282013)
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研究分担者 |
山本 英明 東北大学, 電気通信研究所, 准教授 (10552036)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ハイブリッド脳 / 培養神経回路 / 半導体神経回路 / 脳型計算機能 |
研究実績の概要 |
本研究では、培養神経細胞を用いて再構成される人工神経回路すなわち培養神経回路と、集積回路上に実現される人工神経回路すなわち半導体神経回路を融合したハイブリッド脳を構成する。研究の目的は、構造可変かつ大規模な生体神経回路を模倣するハイブリッド脳を手段として、生体で実現されている脳型計算機能を検証する。人工的に実現された神経回路において、回路構造と計算機能の関係、学習機能の発現メカニズムなどを実験から明らかにし、半導体神経回路に取り込むべき計算機能の抽出を行う。研究のスケジュールは、最初の1年半でハイブリッド脳の構成を行い、残りの1年半で脳型計算機能の抽出を行う。 本年度は、ハイブリッド脳の構成に向けて、半導体神経回路の実装と、培養神経回路の信号計測と刺激印可を同時に行うシステムの構築を行った。半導体神経回路の開発では、多様な神経パルスを出力するCMOSスパイキングニューロン回路を用いて48ニューロンから成る結合が可変なネットワークを構築した。また、本ネットワークにおいて、生体と同様に、入力信号に応じて多様な反応を示すことを確認した。さらに、培養神経回路の開発では、高密度多点電極アレイによる信号計測と電気刺激を同時に行うシステムを構築し、単発刺激に対する応答特性を調べ、刺激位置に依存した反応が得られることを確認した。これらにより、ハイブリッド脳を構成するために必要ないくつかの要素技術の開発に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半導体神経回路と培養神経回路のそれぞれの開発が順調に進んでおり、ハイブリッド脳を構築するための準備が予定通り整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、ハイブリッド脳の構成に向けて、半導体神経回路と培養神経回路の接続・融合を進める。神経回路地図に示されるような局所的・大局的結合構造が本質的役割を果たす時空間ダイナミクスを検証するために、小数の局所回路を実現する培養神経回路と、多数の神経細胞から成る大局的構造を再現する半導体神経回路の両者が不可欠である。よって半導体神経回路の大規模化が大きな課題である。また、信号レベルの整合を図るため、両回路のインターフェースを担うシステムを導入することも重要である。 次に、脳型計算機能の抽出を行う。予備実験としてハイブリッド脳の基本特性を確認した後、生体の脳でよく知られている回路構造の一部を実装し、そこに発現する時空間ダイナミクスや学習機能などを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究を効率的に進めることで消耗品等の支出を最小限に抑えることができたため、次年度への繰越が生じた。繰越分については、国際会議への出張旅費等に充当する予定である。
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