研究実績の概要 |
本研究では、政策課題に対する市民と自治体の意識を調査する文書ジャンルとして、ソーシャルメディアと市議会の議事録を対象とし、市民や市議会議員の意見を賛成・反対などの立場で分類し、有用性や地域依存性、政策課題に対する適合性などの属性を判別して組み合わせて抽出した意見を都市別に比較する。提案手法では、政策課題に対するアテンション(注意機構)や、適合性を考慮したマルチタスク学習により、市民意見・市議会議員意見の抽出精度が有意に向上することを明らかにした。さらに、待機児童問題に関する市議会議員と市民意見を福岡市と大阪市と横浜市とで比較した結果、横浜市において最もギャップが大きい傾向を明らかにし、その要因として自治体が推進している保留児童の取り扱いに対して市民が反対していることを明らかにした。これらの成果は、国際ジャーナルIJDL(Springer, IF: 1.8(5 year impact factor, 2022))に採択された。また、都市を横断した市民意見抽出の研究が言語処理学会論文誌に採択され、市民意見分析に関して書籍の分担執筆を行い、言語処理学会 第30回年次大会 併設WS 自治体における生成AIの利活用と問題点において、「市民および市議会議員の意見分析と自治体間比較」と題して発表を行った。さらに、部首ならびに漢字の画像に着目することで、未知語の意味表現(埋め込み)を効果的に構築する手法について国際会議 IJCNN 2023 で発表した。そのほか、大規模言語モデルであるT5を利用した解説文生成の手法に関する研究(日本データベース学会 データドリブンスタディーズ採録)、Big Five モデルのファセットに着目した市民の性格特性の分析、大規模言語モデルを利用した市民の避難行動の分析、ESGスコアの根拠抽出などの研究を遂行した。
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