研究課題/領域番号 |
22K19825
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
植野 真臣 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (50262316)
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研究分担者 |
宇都 雅輝 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (10732571)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | Knowledge Tracing / 教育ビックデータ / 項目反応理論 / Deep Learning |
研究実績の概要 |
教育ビックデータから学習者の知識状態を推定し,適応的に学習支援するアダプティブラーニングの基礎技術として,Deep Learningの利用が注目されている.これらの手法は学習者の未知の項目への反応予測精度は高いが,パラメータの解釈性が低い問題がある.一方,確率モデルの一つである項目反応理論(IRT)は,パラメータの解釈性は高いが予測精度はDeepLearningに劣る.我々は予測精度と解釈性の両立を目指したDeep-IRTを開発してきたが,この手法では解釈性の改善が限定的であった.そこで,本研究では,Deep-IRTに確率的アプローチを組み込み,高い解釈性と予測精度を実現できるBayesian Deep-IRTを提案する.具体的には,Deep-IRTにベイズ深層学習を用いて確率変数を組み込み,IRT同様の解釈性を持ち,さらに過学習を避けて予測精度も改善できるBayesian DeepIRTを提案する.さらに,ヒントなどの支援による課題への成功確率を予測しながら最適支援(ヒント)選択を行うことを目指し,Deep-IRTにヒントを追加したBayesian Deep Hint modelを開発する.また,本手法が確率的性質を持ち,未知の項目への正答確率推定値が真の値に漸近一致することを数学的に証明する. この目標に向け,令和4年度には,Bayesian Deep-IRTの開発と実装を行った.提案するBayesian Deep-IRTは,同様に独立の学習者ネットワークと項目ネットワークにより構成される.提案モデルでは,学習者のスキル能力の重み,項目のスキル難易度の重みの事後分布に正規分布を仮定し,ベイズ深層学習の変分ベイズ法により事後分布と変分事後分布とのカルバックライブラーを最小にするように変分パラメータを推定した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り,当初計画に合わせた技術開発は進んでおり,その前提となる研究開発については論文も掲載されている.このことから概ね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度には,Bayesian Deep-IRTにヒントネットワークを追加し,ヒントを提示したときの正誤反応を予測し,最適なヒントを提示できるようにする.本研究の最も重要な貢献はこれらの推定値が真の値に収束することが証明できることである.また,時系列隠れ変数へのアテンション・モデルの拡張として,対象項目との関係性も考慮して過去データを最適に忘却する手法を組み込み予測精度を向上させる.提案手法の確率モデル導入による解釈性,ベイズ推定により過学習を避けた予測精度の向上,を実験により示す. これに加え,令和5年度には,Bayesian DeepIRTの数学的性質の解明も進める.Bayesian Deep-IRTでは,学習者の項目への正答確率推定値が漸近的に真の値に一致することを証明し,確率アプローチとDeepLearningとの理論的関係を明らかする.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染の影響により未だオンラインの学会が多く,旅費に残額が生じた.今後は,現地開催となる学会に状況に応じて参加するとともに,旅費として使用予定であった費用を実験補助謝金等に使用して,研究効率を高めることなどを検討する.
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