本研究では,睡眠障害の約6割を占める睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)に着目し,布団やマットレスの下に敷いた無拘束型マットレスセンサのみを用いたSAS判定手法の確立を目的とする.その達成に向け,令和5年度では,令和4年度に考案した夜間の「睡眠時」無拘束型SAS判定法を,日中の「覚醒時」無拘束型SAS判定法に展開し,夜間にしか判定できなかったSAS判定を日中でも可能にした.具体的には,睡眠中の覚醒と日中の覚醒が同じ特性を示すと仮定し,睡眠中の覚醒を学習後,日中の生体振動データの中で睡眠中の覚醒と同じ特性を示すエポックのみを抽出し,それらの対数パワースペクトル密度の平均を計算する方法を考案した.約100名の就寝前の生体振動データを用いてSAS判定の実験をしたところ,90%以上の精度での判定を達成し,無/低呼吸が起こらない日中の生体振動データのみでのSAS判定を実現した. 本研究に関連する成果として,計算知能関係の英文ジャーナルJACIIIに論文が採択されるとともに,生体工学分野のIEEE EMBC2023,人工知能分野のAAAI (The Association for the Advancement of Artificial Intelligence)のThe AAAI 2024 Spring Symposia,インタラクション分野のHCI International 2023の国際会議で発表し,IEEE EMBC2024に投稿した論文が採択された.さらに,スタンフォード大学(米国)の医師ともディスカッションし,医学的な助言を受けた.また,研究成果が着目され,公益社団法人の自動車技術会から運転事故防止に向けたSASに関する招待講演を依頼されるとともに,NHK Eテレの「バリューの真実」に出演した.
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