研究課題/領域番号 |
22K19831
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
西野 邦彦 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (30432438)
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研究分担者 |
青木 工太 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授(常勤) (90447532)
西野 美都子 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (30510440)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 薬剤耐性 / 細菌 / 判別 |
研究実績の概要 |
多剤耐性菌を克服することは、世界的な重要課題である。新型コロナウイルス感染症治療では、抗生物質使用が増えたため、細菌の多剤耐性化が促進され、その病原体が「憂慮すべき数」に上っていることがWHOでも指摘されており、耐性菌が出現するメカニズムを理解し、それらを抑制する手法を開発することは急務である。病院検査室等においても迅速な耐性菌検出法の開発や、耐性菌の出現を予測し感染拡大を防止する対策法の考案が求められている。薬剤耐性菌中では同定されている耐性遺伝子以外にも数多くの遺伝子の発現変化が起きていることが明らかにされつつある。また、耐性菌の形態もそれに伴い、変化することが分かってきた。本研究では、病原細菌の薬剤耐性化プロセスにおいて、遺伝子のみならず形態学的にも変化していることに着目し、耐性進化解析で得られた様々な種の薬剤耐性菌株の形態情報を取得し、多剤耐性菌自動推定法の技術開発を目指す。 実験によって得られた多剤耐性菌の位相差光学顕微鏡画像を用いて、バイオインフォマティクスを活用した多面的な解析を行い、形態との関連性という新たな切り口から薬剤耐性という現象をより深く理解することを目的として解析を進めた。具体的には、耐性菌と感受性菌の形態の違いを記述する特徴量の抽出、形態の変化を説明する遺伝的背景の探索を行った。耐性菌と感受性菌を、顕微鏡画像を用いて判別する手法の開発にも取り組んだ。様々な異なる作用機序の薬剤耐性菌の形態変化が価確認され、ヒストグラム交差法、画像判別の結果の双方から、キノロン系抗菌薬耐性菌の形態変化が最も顕著であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
耐性菌と感受性菌の形態の違いを記述する特徴量の抽出、形態の変化を説明する遺伝的背景の探索を行うとともに、耐性菌と感受性菌を、顕微鏡画像を用いて判別する手法の開発にも取り組み、様々な異なる作用機序の薬剤耐性菌の形態変化が価確認され、当初の計画はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤耐性が生み出される背景にはどのような機構が複合的に積み重なっているのかを解き明かす必要があると考えている。これまで、細菌に薬剤を作用させた結果起こる形態変化に関する研究はあったが、薬剤なしの環境下で薬剤耐性菌が感受性菌に比べてどのような違いがあるのかについては理解がほとんど進んでいないため、今後、薬剤非存在下での耐性細菌の画像情報を網羅的に取得し、得られた画像情報の解析を進める。また、耐性菌のバイオインフォマティクス解析を進め、細菌がどの段階で耐性を獲得し、遺伝情報の変化が細菌形態に現れるのかといったことについて研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、オンラインを活用したため、旅費の支出が想定していたより少なかったが、状況が落ち着くとともに対面型の成果発表等での機会が増えると考えられたため、また、消耗品に関しては今年度は画像解析を集中的に進めたため、想定していたよりも消耗品に対する支出が少なく、次年度以降により多くのものが必要となったため。
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