研究課題
今年度は昨年度検討したIP露光条件のもと、環境試料に適した遮蔽方法の検討と行った。人工放射性核種で低線量被ばくの原因として特に重要である核種は長期半減期をもつ放射性ストロンチウム90と放射性セシウム137である。これら二つの核種を、ベータ線最大エネルギーの違いを利用して遮蔽を用いて分離できるかどうかの可能性を検討した。分担研究者である木野グループの尾田により確立された歯をモデルにしたPHITSによる吸収線量分布のシミュレーションによれば、ポリエチレン板による遮蔽の場合、厚さ1.5mmの遮蔽では、放射性ストロンチウム90で約65%が、放射性セシウム137では約93%が遮蔽され、厚さ3.0mmの遮蔽では、それぞれ約85%、約99%が遮蔽されることが明らかにされた。理論的には遮蔽厚が厚いほど放射性ストロンチウム90由来の放射線の割合が高くなるが、これは試料中の含有放射性物質量が遮蔽による減衰を考慮してもなお十分高濃度である場合に適応できる。遮蔽後にもIPにおける検出が可能な放射線量であることが遮蔽条件を制限する要因であり、これまでの検討から遮蔽隊の材料は密度が比較的小さいポリエチレン板を、露光時間は7日間から4週間が妥当であると考え、この条件で遮蔽による核種分離効果を検討した。その結果、試料填入密度0.1~0.4 g/cm2において遮蔽率は放射性ストロンチウム90で66~74%、放射性セシウム137で96~97%で理論値より大きな遮蔽率を示した。この違いは遮蔽なしと遮蔽ありの場合のIPまでの距離が遮蔽体の厚さの分だけ異なることが一因として考えられた。今回得られた結果からバックグラウンドにマスクされないIPのQL値は放射性ストロンチウム90で100程度、放射性セシウム137で1000程度上昇している場合に1.5mmポリエチレン板の遮蔽で検出可能であることが推察された。
2: おおむね順調に進展している
本年度はPHITSの線量吸収分布のしゅみゅレーションとの整合性を検討しだどうな結果を得た。特に進捗に問題ないと思われた。
次年度は実際の試料での検出限界を実際の被災動物の試料を用いて検討するよていである。
本年度はPHITSによるシミュレーション結果と標準試料との整合性の検証を実施したが、人件費が不要であった。そのため次年度使用として研究を継続する。
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Radiation Protection Dosimetry
巻: 199 ページ: 1620-1625
10.1093/rpd/ncad146
巻: 199 ページ: 1557-1564
10.1093/rpd/ncad150