研究課題/領域番号 |
22K19843
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
高田 秀重 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70187970)
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研究分担者 |
高屋敷 典生 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00364521)
水川 薫子 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50636868)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロプラスチック / ナノプラスチック / ポリスチレン / 添加剤 / ゲルクロマトグラフィー / 熱分解GC-MS |
研究実績の概要 |
抽出法として加圧流体抽出法とアルカリ加水分解法を比較し、夾雑物が少なく、ブランクも低いアルカリ加水分解法を採用した。また、汎用ポリマーの中で、常温で有機溶媒(ジクロロメタン:DCM)に可溶なポリマーであるポリスチレンを対象ポリマーとした。夾雑有機物の除去とポリマーとモノマーの分離を目的としてゲルクロマトグラフィーを検討し、充填樹脂からのコンタミネーションのないポリデキストランタイプの樹脂(Sephadex社LH-20)をガラスカラムに充填する方法を採用した。熱分解GC/MSの条件を検討し、熱分解生成物をm/z=91でスチレントリマーを定量した。分子量5千から88万までの5種のポリスチレン標準品を用いてレスポンスを比較検討したが、レスポンスはほぼ一定していたことから、分子量20万のポリスチレン標準品を用いて定量した。回収率と夾雑物によるマトリクス効果を補正するために、同位体ラベルしたポリスチレン標準品を購入・調整し、抽出後に添加した。上記確立した方法を、東京都野川で採取した鯉および小笠原で採取したウミガメ血液試料に適用し、鯉の筋肉およびウミガメの血液からポリスチレンを検出した。鯉の筋肉を使って再現性と添加回収率を検討した結果、相対標準偏差7%、回収率100%であった。モノマー画分で測定対象にしたポリ塩化ビフェニル(PCBs)と多環芳香族炭化水素類(PAHs)についても、再現性・回収率とも良好であることが確認できた。 底生生物試料の採取を多摩川河口において、海浜生物試料の採取を小笠原で行い、採取試料は冷凍保存し、2023年度の分析に供する。 ヒト試料の入手・分析に必要な倫理講習を代表者と分担者が受講し、各所属機関の倫理員会の承認を得た。ヒト試料の取得にあたって協力していただく筑波大学附属病院つくばヒト組織バイオバンクセンター竹内朋代教授も交え、試料取得の具体的な打合せを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生体組織および血液試料中のナノプラスチックの測定法を開発し、実生物試料に応用し、検出された点で評価できる。ヒト試料については、倫理関係の手続きに時間がかかったが、手続きは完了し、具体的な試料取得の流れも確認でき、使用する機材やそこからのコンタミネーションの有無について、研究代表者と分担者間で確認を行い、試料の提供を待つ段階である。プラスチック添加剤の分析についての、分析精度の確認が遅れており、全体としてやや遅れているという自己評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
生物試料中の添加剤の分析について、精度確認を早急に行い、ナノプラスチックと添加剤の同時測定法を行える体制を確立する。野生生物試料とヒト試料については、取得できているものから分析を開始し、その結果を見ながら、試料の取得・分析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
分析法を検討し、確立するまでに時間を要した。さらに、ヒト試料については倫理手続きに当初予想した以上に時間を要した。これらの理由により、実試料の分析数が少なかったため、その分の消耗品費の支出が少なかった。2023年度は昨年度予定されていた数の実試料の分析を進めるので、その分消耗品費の支出を多くして対応する。
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