自然界に存在し、環境負荷が懸念されているナノプラスチックのモデルとして、粒径や組成が異なる複数種類の合成高分子ナノ粒子を用いた。ナノ粒子を構成する高分子として、化学構造の多様性からアクリレート系ならびにメタクリレート系高分子を主に選択した。前年度に見出した、水溶性ポリマーと相互作用することで、特徴的で識別可能な蛍光シグナルを発する環境応答性蛍光基導入ペプチドを、高分子ナノ粒子を検出・識別するためのセンサー分子として同様に用いた。ペプチドと高分子ナノ粒子それぞれの水溶液を混合し、所定時間、相互作用させた後に蛍光スペクトルを測定した結果、高分子ナノ粒子の種類に応じて多様な蛍光スペクトルを示すことが分かった。すなわち、水溶性高分子の検出と識別に有用であったペプチドセンサー分子が高分子ナノ粒子からの情報獲得にも有用である可能性が示唆された。そこで、水溶性高分子の際と同様に、得られた蛍光スペクトルのピーク強度や所定の波長間における蛍光強度比をそれぞれの高分子ナノ粒子に対する特徴的なシグナル情報(つまり、訓練(学習)データ)とし、教師あり・なしの機械学習を実施した。例えば、教師ありの線形判別分析により次元削減すると、それぞれの高分子ナノ粒子のシグナルを2次元のスコアプロット上でクラスタリングできた。仮想的な未知試料であるテスト用の高分子ナノ粒子の蛍光スペクトルを測定し、得られたシグナルを上記のスコアプロットに当てはめることで高分子ナノ粒子を識別できた。
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