研究課題/領域番号 |
22K19857
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
石川 尚人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋機能利用部門(生物地球化学センター), 副主任研究員 (80609389)
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研究分担者 |
田所 和明 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水産資源研究所(塩釜), 主幹研究員 (70399575)
近藤 倫生 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (30388160)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | 群集平均栄養段階 / バイオマス分布 / 食物網のときほぐし / 動物プランクトン / 時空間変異 |
研究実績の概要 |
本研究は「生物群集の平均的な栄養段階」(integrated Trophic Position: iTP)を利用した「水をすくうだけで生態系がわかる」新しい生態系観測手法を確立することを目的とする。そのためにまず今年度は、まずiTPがどんな特徴をもつ指標なのか解析した。具体的には、Food Network Unfoldingと呼ばれる技法で食物網を食物連鎖に変換することで、iTPが食物連鎖の縦方向の多様性の指標であるvertical diversity (Dv) と指数関係を示すはず、という作業仮説を検証した。世界中の海洋生態系の食物網データベースをメタ解析したところ、iTPとDvとの間に強い相関を認め、特に指数関数がこの相関をよく説明することを明らかにした。さらに、生態系の生物群集の部分集合のiTP (partial iTP) が、群集全体のiTP (total iTP) をある程度反映することを明らかにした。これらの成果は、iTPの生態学的な意味を明らかにしたと共に、アミノ酸の窒素同位体比による野外でのiTPの推定という、本プロジェクトのコアとなる部分を理論的にサポートする成果として、現在学術誌に論文を投稿中である。 さらに、北太平洋の動物プランクトン群集iTPの時空間的な変動を調べる研究を進めている。ここでは、過去に採集された動物プランクトンのホルマリン標本のアミノ酸窒素同位体比測定から、親潮と黒潮の観測定点で採集された3年分の試料を解析している。予備的な結果、iTPの変動要因は場所によって異なること、植物プランクトンのブルームや動物プランクトン群集の多様性が重要であることなどが示唆された。今後、海洋学的なデータの解析、動物プランクトン群集のサイズ分布推定、および追加で2年分の試料を解析することで、より説得力のあるデータセットを構築していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本手法の理論的根拠となる論文を学術誌に投稿し、野外のデータの解析も進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
海洋学的なデータの解析、動物プランクトン群集のサイズ分布推定、および追加で2年分の試料を解析することで、より説得力のあるデータセットを構築していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は理論的な研究に重点を置いたため、実験補助のための人件費が想定より少なかった。次年度は実験助手雇用のための人件費が多くなると予測されるため、そちらへの充当とする。
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