ダム貯水池からのAs含有堆積物に、活性汚泥由来のAs還元細菌およびFe還元細菌の各集積培養物と、乳酸Naを含む液体培地を混合(固液比1:10)し、55日間の嫌気培養を行い、堆積物からのAsの溶出除去を試みた。液体培地のみと純水のみを加えた2条件と比較検討した。 培養物添加の条件では、溶解性の全AsとAs(III)態Asの濃度が徐々に増加し、堆積物からのAsの溶出を確認できた。最終的な溶解性全As濃度は0.15 mg/Lであり、水質環境基準値0.01 mg/Lの15倍に達したが、As溶出率は0.4%程度と低かった。培養物添加の条件では、溶解性の全FeおよびFe(II)の濃度は一旦増加し、他の条件よりも高くなり、Feの還元による溶出が確認できたが、その後、濃度が減少した。 次に、堆積物の嫌気培養物と集積培養物を新しい堆積物に加えて繰返し70日間の嫌気培養を行った。溶解性の全As濃度は、培養物添加の条件で純水のみ添加の条件よりも高くなったが、培地のみ添加の条件で最も高くなった。堆積物に存在する細菌の影響を無視できないが、乳酸がFe(III)やAs(V)を還元してAsを溶出させた可能性も考えられる。 As(V)を含む水試料にAlを含む浄水汚泥の塩酸溶解物を加えることでAs(V)を不溶化でき、その不溶化物を亜ジチオン酸塩で還元状態に曝してもAsは再溶解しない。上述の堆積物から溶出したAsを除去した後、堆積物に残留する溶解性のAs(III)を酸化し、浄水汚泥の塩酸溶解物を添加することでAsを再溶解しにくい状態に不溶化できると考えられる。 一方、堆積物中のAl化合物と沈殿しているAsは還元されにくく、これが堆積物からのAsの溶出除去を妨げている可能性が考えられる。堆積物からAsを効率的に溶出除去するには、FeやAsの還元だけで無く、Alの溶解あるいは抽出も必要であると考えられる。
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