研究課題/領域番号 |
22K19861
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
琵琶 哲志 東北大学, 工学研究科, 教授 (50314034)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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キーワード | 熱音響デバイス / スターリングエンジン / エネルギー変換 |
研究実績の概要 |
キネマティック型スターリングエンジンは往復動ピストンがフライホイールに接続された構造を持ち,軸出力の形で動力を発生する.このタイプのエンジンではリンク機構で接続された出力ピストンとディスプレーサーが必須の機械要素であるために,多様な機構が提案されてきた.本研究ではディスプレーサーを取り除くことで性能を維持したまま装置構造を大幅に簡略化することを目指している. 昨年度までに熱音響エンジンの仕組みを利用することですでにディスプレーサーなしのプロトタイプ装置の動作確認を終えた.また,動作機構の物理的メカニズムの基本的理解について実験的解析を行った.プロトタイプ装置は内径40mmと内径12mmのパイプで構成されるループ管とピストン・シリンダ・クランク・コネクティングロッド・フライホイールで構成される機械出力部からなる.ループ管には高温及び低温の熱交換器で挟み込んだ蓄熱器が備え付けられている.作動気体は大気圧空気である.このプロトタイプ装置において低温部温度を室温に保ったまま高温部温度を150度まで加熱すると安定的に回転動作する.この回転数の時間的平均値と加熱温度の関係,および回転数の時間的なゆらぎについて,フライホイールの回転軸周りの運動方程式をもとに検討し,ループ部分全体の音響インピーダンスが時間平均回転数を決定する役割を持っていることを実験的に明らかにした.また回転数のゆらぎはループの音響インピーダンスのほかに機械出力部の特性が反映されることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ディスプレーサーを取り除いてもフライホイールを安定的に動作できることがわかっただけでなく,その回転数についても基本的な知見が得られた点は大きな成果である.この成果についてはすでに投稿論文の形にまとめたが,その過程では共同研究者であるPenelet准教授(フランスLe Mans大学)とも意見交換を行って進めることができた.回転数計測は本研究ではじめて取り組んだ実験手法であり,その整備に時間がかかった.現在では,基本的なデータ取得は可能になっており特段の支障はない.ただし,ピストン質量が比較的重いために,回転数がある程度増加するとプロトタイプ装置そのものの振動が大きくなることがわかってきた.実験台にクランプで固定するだけでは十分ではなく,その対策が必要なことが明らかになっている.
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今後の研究の推進方策 |
ディスプレーサーのないプロトタイプ装置の動作機構について基本的な理解を得たので,それをもとに装置の性能向上を図り,ディスプレーサーを備える機械式スターリングエンジンとの比較を行いたい.そのためにまずはループ管部分の音響インピーダンスを適切に調整するために数値的な方法でそれを算出できるコードを開発する.同時に,数値モデルを簡略化した数理モデルを作り,装置各部のパラメータの役割を明らかにしながら定量的に評価することを行う.また,実験的には装置全体の振動を低減する必要があるため,フライホイールにカウンターウエイトを設置するなどの方策を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の実験で,自作したプロトタイプ装置のフライホイールの回転数がある程度以上大きくなると装置そのものの振動が大きくなること,また実験台にクランプなどで固定するだけではその振動を押さえ込むのには不十分であることがわかった.このままの状態では高回転数領域の実験を行なってもプロトタイプ装置の特性評価には必ずしもならないと判断し,フライホイールにカウンターウエイトを取り付ける改良を行うこととした.2023年度にこの改良を行うことにしたために繰越額が生じた.
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