研究課題/領域番号 |
22K19874
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研究機関 | 八戸工業大学 |
研究代表者 |
小林 正樹 八戸工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (90312678)
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研究分担者 |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
片山 裕美 八戸工業大学, 工学部, 講師 (30823661)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | カーボンニュートラル / 常温メタン化 / CO2削減 / マイクロ波 / 触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では、2050年CO2排出実質ゼロ宣言の実現に資する基幹反応であるCO2のメタン化について、触媒とマイクロ波照射の併用による常温メタン化の実効性を検討するものである。 これにおいては、産業プロセスから排出されるCO2を空気成分(具体的には酸素。つまり、酸化雰囲気での反応となる)と混在したまま、25℃程度の常温域で高効率かつ高選択的に、そして大多量にCH4に変換する画期的な触媒反応プロセスを構築する。 構築のポイントは、迅速なエネルギー励起と浸透伝播加熱性をもつマイクロ波の活用と、物質・熱移動制御に優れた構造体触媒反応場の活用、そして世界でまだ発見されたばかりのCO2の常温メタン化技術(通常300℃での作動を常温域に大幅に低下)の活用を図り、ハイスペックな〔CO2→CH4〕の変換場を構築する点である。これに加え、本CO2物質変換場の触媒作用機構を解明し、CO2の資源化技術の新しい学理開拓を目的とする。 本研究では、従来の触媒反応場にマイクロ波照射を導入する。マイクロ波は電磁波であり、人体に有害であり、かつ状況によってスパーク発生等の危険性があるため、反応システムの設計および運用にあたっては、その漏洩や火災が生じないような反応系を構築する必要がある。それと同時に、外部機器との連結による系のモニタリングや、常温メタン化を進行させる上でマイクロ波照射との連携を図る工夫も必要であり、これらの両立とバランスが重要となる。 現時点までに、本反応システムの構築を行い、これら課題を解決する目途が立ちつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況を下記に述べる。 (1)CO2、H2、O2、N2の混合比を変化させ、所定温度でメタン化反応を行える実験装置ラインを組み上げた。そして、ラインにガスの漏洩がなく、物質収支計算上の問題がないことを確認した。 (2)(1)の実験装置を用い、Ni/CeO2の粒状触媒による通常の外部加熱でのメタン化を行い、既報の文献値とも比較してメタン化が進行していることを定量的に確認した。 (3)(2)を受け、CO2の常温メタン化とマイクロ波照射のカップリングを行うためのシステム設計を検討した。マイクロ波照射場はマイクロ波の漏洩を防止する観点から半閉鎖系とする必要があった。常温メタン化を進行させるにおいては、その反応初期段階で外部加熱が必要であり、かつ、触媒を賦活化する水素還元後には外部雰囲気に触れない環境が必要である。その結果、常温メタン化とマイクロ波照射場を組み合わせるには、温度制御および触媒被毒防止の観点から、Ni/CeO2触媒よりも低温でメタン化反応が進行するRu/CeO2触媒の使用が装置としてより適切と判断し、Ru/CeO2触媒反応場にマイクロ波を照射可能な実験装置、操作方法を構築した。 (4)現在、(3)で構築した実験装置でのメタン化を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
構築した実験装置を用いて、Ru/CeO2触媒による常温メタン化反応場に対し、マイクロ波照射を重畳することによる効果を確認していく。この際、使用するRu/CeO2としては粒状触媒に加え、熱移動・物質移動を促進する効果を有する構造体触媒の双方を比較検討し、マイクロ波照射出力、原料ガス流量等、操作条件の影響を検討する。。Ru/CeO2触媒による常温メタン化の安定的な再現性を確立するべく、実験装置の改善、構築も同時に行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験装置構築および実験精度向上に時間を必要としたため、外部に発表可能な結果が得られず、学会参加費・旅費の支出が減少した。また、同様な理由で研究の進展に遅れが出たため、当初購入予定であった設備備品であるガスクロマトグラフ装置の購入に至らなかった。 次年度には学会発表およびガスクロマトグラフ購入を行い、繰越予算を消化する見込みである。
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