研究実績の概要 |
本研究では,未分化なゴムノキの培養細胞に対して,低分子化合物処理とゴム合成に必須な遺伝子の導入を行っていき,対応する細胞内代謝物質プロファイルを取得することで未分化培養細胞内にゴム粒子を誘導することを試みることを目的としている。 これまでに低分子化合物の候補としてはA2を選抜している.A2の作用機構を推定するためにA2処理時のトランスクリプトームおよびメタボローム解析を行ってきたが,より詳細なA2の作用について検討するために,今年度はA2処理時のプロテオーム解析を行い,現在データを解析している。 ゴム合成関連遺伝子<I>CPT,CPTL,REF,SRPP</I>にそれぞれ蛍光タンパク質遺伝子を融合させたものをパーティクルガン法で遺伝子導入し、それぞれのタンパク質の局在および挙動を解析した.小胞体との共局在を確認するためにHDEL配列に蛍光タンパク質を融合させたコンストラクトとCPT1をパーティクルガン法で同時に細胞に導入発現させたところ,局在が一致していた.よってゴム培養細胞においてCPT1は小胞体に局在している可能性が示唆された.並行して、ゴムゲノムデータベースのアップデートにより、CPTLの配列がこれまで扱っていた配列と異なることが明らかになった.そこで,新規配列に蛍光タンパク質遺伝子を融合させたコンストラクトを作成した.再度,局在と挙動を観察した結果,CPT1とCPTLだけを導入した細胞においては時間経過に伴いCPTとCPTLの局在が一致しなくなるのに対し,REFを追加して導入するとCPT1,CPTLの局在が小胞体にとどまることがが分かった.当初の計画ではこの遺伝子導入した細胞のシングルセルメタボロームを行う予定だったが,必要量のサンプルが取得できないため,今年度はゴム培養細胞の恒常的な形質転換の確立を試みる予定である.
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