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2022 年度 実施状況報告書

細胞由来微粒子迅速測定のための蛍光と散乱光測定の融合

研究課題

研究課題/領域番号 22K19886
研究機関北海道大学

研究代表者

金城 政孝  北海道大学, 先端生命科学研究院, 名誉教授 (70177971)

研究分担者 北村 朗  北海道大学, 先端生命科学研究院, 講師 (10580152)
研究期間 (年度) 2022-06-30 – 2024-03-31
キーワード蛍光測定 / 光散乱測定 / 相関関数 / 微粒子 / 蛍光微粒子
研究実績の概要

細胞内の液-液相分離による分子集合体やタンパク質凝縮体、また細胞外に放出される細胞外小胞など、様々な形態や大きさを有する新規の構造体が細胞情報伝達や疾患など生体の重要な機能に関連することが認識されている。本研究では、そのような多彩な構造と幅広いサイズ分布を持つ分子集合体を一括して『細胞由来微粒子』として捉え、それらを対象とした散乱光による網羅的検出と蛍光による特異的検出を統合した新規定量的検出法の確立を目指している。
生体分子を対象とした蛍光と散乱光測定を融合した同時計測方法はこれまでになく、シグナル強度だけを見ると、散乱強度は極端に強く、蛍光は微弱であり、単純に比較することは困難である。申請者等は溶液中の分子や微粒子の特徴の一つである「揺れ動く」性質に着目した。蛍光・散乱測定に共通する時系列シグナル変化を基礎とする「自己相関解析」と、さらに蛍光と散乱光シグナル間の「相互相関解析」の同時利用で蛍光と散乱測定の二つの情報の統合と高度利用法を目指している。
具体的測定手段は申請者等が構築した不等分割光ファイバー型蛍光相関分光装置の散乱同時測定への展開と高度化である。本研究では特に細胞外微粒子の中でもガン診断の指標等として注目されている抗原提示エクソソームの定量的検出・同定法の確立を通してその性能を実証し、新規細胞由来微粒子検出法としての可能性を実証する
不当分割光ファイバーを利用した2色蛍光相互相関分光装置(FCrossCS)は、通常の励起光ダイクロイックミラー(第1次DM)を必要としないことから、これまで測定毎に必要とされた光軸・ピンホール調整等のキャリブレーションは一切不要となり、小型で長期安定な蛍光測定装置として利用でき、光軸調整不要なことから広い拡張性を有する。その拡張性の一つに、検出側の蛍光分光ダイクロイックミラー(2次)をハーフミラーに交換することで蛍光と散乱の同時測定を行なった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

不等分割光ファイバーカプラーを利用した対物レンズ型小型FCCS測定装置を蛍光・散乱同時測定可能とするために、分光ダイクロイックミラーをハーフミラ―に交換した。ハーフミラーからの二つに分けた光の片方に蛍光フィルターを設置した。この選択波長は緑蛍光用にはET535/50M,赤色蛍光用にはET665LPとし,それぞれ目的に応じて利用した。もう片方にはフィルターを設置せずに,散乱光を含まれるようにした。
蛍光ビーズ(42nm)並びに通常のビーズ(100nm)を測定対象としてシグナルを検出し,解析の結果,ほぼそれぞれの大きさを得たことを確認した。
当初の計画では対物レンズではなく、シングルモード光ファイバーの先端に直接レンズを加工したレンズ付きファイバーを利用し、試料溶液中における励起光の集光とその焦点領域で生じた蛍光の取り込みシステムを構築する予定であったが,検出効率を優先することから現状は対物レンズ型をして測定を行っている。
今年度は,装置の改良とシグナル検出を目指したため,進捗状況としては概ね妥当と判断した。

今後の研究の推進方策

FCS-DLSによるエクソソーム検出の確認
現状は対物レンズ上で試料を検出しているが,今後は光ファイバーの端面でも検出を試みる。また光ファイバー型FCS-DLS装置を調整し、蛍光・散乱の同時高効率化を目指す。その一つとして2同軸(ダブルクラッド、又は多軸)光ファイバー等の種々の光ファイバー等利用を検討しつつ、FCS-DLS試作装置の効率化と、実際のエクソソームの検出・同定法の開発を進める。
測定対象試料は、2色染色の蛍光ビーズや,散乱測定のための無標識ビーズを利用して,蛍光ビーズと無標識ビーズの割合を変えてその比が相互相関関数にどのような影響を与えるか検討する。
次に市販で入手が可能な母乳由来エクソソームと,エクソソーム認識抗体としてはスタンダートとして知られているCD9、CD63、CD81等を測定対象として利用する。特にCD9蛍光標識抗体(CD9-Alexa488)は予備的測定からエクソソーム認識能が一番強く、調整用として利用する予定。また今年度は通常のHela細胞などやガン関連細胞等を利用し、CD147認識抗体を利用して、細胞培養上清を利用し実際にガン関連エクソソームを対象として検出を試みる。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画ではシングルモード光ファイバーの先端に直接レンズを加工したレンズ付きファイバーを利用し、試料溶液中における励起光の集光とその焦点領域で生じた蛍光並びに散乱光の取り込みシステムを構築する予定であったが,現状の対物レンズを利用して検出効率を上げて,蛍光と散乱光の同時測定の実証を優先したために,そのレンズ付き光ファイバー並びにその付属関連機器の購入を来年度にしたために次年度使用額が生じた。
対物レンズ上での測定が光集光効率もよく,順調なため次年度は引き続き対物レンズ上での測定を継続するが,レンズ付き光ファイバーも比較のため購入する予定。研究目的とした蛍光と散乱光の同時測定の検討は引き続き行う予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] スウェーデン王立工科大学応用物理学部(スウェーデン)

    • 国名
      スウェーデン
    • 外国機関名
      スウェーデン王立工科大学応用物理学部
  • [雑誌論文] Intracellular Conformation of Amyotrophic Lateral Sclerosis-Causative TDP-432023

    • 著者名/発表者名
      Kitamura Akira、Yuno Sachiko、Kawamura Rintaro、Kinjo Masataka
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 24 ページ: 5513~5513

    • DOI

      10.3390/ijms24065513

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Trans-cis isomerization kinetics of cyanine dyes reports on the folding states of exogeneous RNA G-quadruplexes in live cells2023

    • 著者名/発表者名
      Kitamura Akira、Tornmalm Johan、Demirbay Baris、Piguet Joachim、Kinjo Masataka、Widengren Jerker
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Research

      巻: 51 ページ: e27~e27

    • DOI

      10.1093/nar/gkac1255

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] GGGGCC-RNA は、TDP43 およびそのカルボキシ断片の凝集を抑制する2022

    • 著者名/発表者名
      Ai Fujimoto , Masataka Kinjo , Akira Kitamura
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] 回転拡散と並進拡散の解析による凝集性タンパク質の検出2022

    • 著者名/発表者名
      Riku Ando , Johtaro Yamamoto, Akira Kitamura , Nori Nakai , Sumio Terada , Masataka Kinjo
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] Size determination of cytoplasmic condensates of optineurin using spatial image correlation spectroscopy (SICS)2022

    • 著者名/発表者名
      Yuta Hamada , Masataka Kinjo , Akira Kitamura
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] Optineurin の E50K 緑内障変異はオリゴマー粒径を増大させる2022

    • 著者名/発表者名
      Rintaro Kawamura , Soya Uetsuki , Takehito Tanzawa , Takayuki Kato , Masataka Kinjo
    • 学会等名
      第60回日本生物物理学会年会
  • [学会発表] Pol-FCS回転拡散測定による抗原抗体反応検出2022

    • 著者名/発表者名
      金城政孝
    • 学会等名
      第18 回バイオオプティクス研究会
    • 招待講演
  • [備考] 蛍光明滅を利用したRNA立体構造検出に成功

    • URL

      https://www.hokudai.ac.jp/news/2023/01/rnarna.html

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公開日: 2023-12-25  

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