細胞内の液-液相分離による分子集合体やタンパク質凝縮体、また細胞外に放出される細胞外小胞など、様々な形態や大きさを有する新規の構造体が認識されている。本研究では、そのような多彩な構造と幅広いサイズ分布を持つ分子集合体を一括して『細胞由来微粒子』として捉え、それらを対象とした散乱光による網羅的検出と蛍光による特異的検出を統合した新規定量的検出法の確立を目指した。 シグナル強度だけを見ると、散乱強度は極端に強く、蛍光は微弱であり、単純に比較することはできない。申請者等は溶液中の分子や微粒子の特徴の一つである「揺れ動く」性質に着目した。蛍光・散乱測定に共通する時系列シグナル変化の解析を基礎とする「自己相関解析」と、さらに蛍光と散乱光シグナル間の「相互相関解析」の同時利用で蛍光と散乱測定の二つの情報の統合と高度利用を目指した。 具体的測定手段は申請者等が構築した不等分割光ファイバー型蛍光相関分光装置の構築との散乱同時測定への展開である。 99:10の不当分割光ファイバーを利用した2色蛍光相互相関分光装置(FCrossCS)は、通常の励起光ダイクロイックミラー(第1次DM)を必要としないため光軸調整不要の特徴を持つ。この装置の蛍光カットフィルターを除いて散乱光の検出を試みた。しかしながら,溶液,蛍光色素溶液,並びに蛍光微粒子を対象としても,反射光がレーザー装置に0.01%以下の微弱光で戻ることで,光源としてのレーザーが不安定化することから,散乱光を安定に検出することがたいへん困難であることが分かった。これは様々な工夫をしたが取り除くことはは困難であった。今後はレーザー照射末端をAPC(Angled Physical Contact)化することで,レーザー装置に本体に直接レーザー光が戻ることなど工夫をすることで可能となることが期待される。
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