研究課題/領域番号 |
22K19896
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
音井 威重 徳島大学, バイオイノベーション研究所, 教授 (30311814)
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研究分担者 |
平田 真樹 徳島大学, バイオイノベーション研究所, 講師 (10815583)
谷原 史倫 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90754680)
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研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / ブタ / SALL1 / TP53 / モデル動物 |
研究実績の概要 |
ブタは生理学的・解剖学的にヒトに近いことから,任意の臓器に腫瘍を自然発症するモデルができれば,がん治療研究に大きな寄与が期待される。本研究は体外受精胚を用い,異なる2つの遺伝子を対象に,一部の胚は臓器形成遺伝子(腎臓形成に関連するSALL1遺伝子)を,他方の胚は腫瘍抑制関連遺伝子(がん抑制遺伝子TP53)をゲノム編集技術によりノックアウトする。次に,2つの胚を凝集(キメラ胚形成)させ,移植後に動物体内にSALL1遺伝子欠損胚(腎臓欠損)が形成した腎臓がない特殊な空間をTP53遺伝子欠損胚(腫瘍誘起)由来細胞で補完することで,腎臓特異的にがんを発症するモデルブタを作製する。本年度は、キメラ法を用いてTP53遺伝子とSALL1遺伝子に変異を持つゲノム編集ブタの作製を試みた。まず、凝集後の透明帯フリー胚の発育に及ぼす胚ステージの影響について検討した。その結果、2細胞期で凝集した胚は、4細胞期で凝集した胚に比べて、有意に高い胚盤胞形成率が得られることがわかった。また、異なるgRNAで編集した凝集胚の変異率および変異効率は、TP53遺伝子の変異効率が有意に減少したが、SALL1遺伝子では減少しなかった。凝集後発育した胚盤胞を3頭のレシピエントの子宮角へ移植した結果、1頭のレシピエントが妊娠したが、25日目に2頭の胎児を流産した。この2頭の胎児に由来するゲノムDNAのディープシークエンス解析により、2頭ともTP53遺伝子のホモ変異とSALL1遺伝子の野生型が確認された。今回、TP53遺伝子とSALL1遺伝子に変異を有するゲノム編集ブタを作製することはできなかったが、本結果は、大型がんモデル動物作製の新たな手法を実現する可能性を示していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画より早く、ゲノム編集したキメラ凝集胚の移植を行い,腎臓特異的TP53遺伝子欠損キメラブタの作出を試みている。結果的に、TP53遺伝子とSALL1遺伝子の両遺伝子に変異を有するゲノム編集ブタを作製することはできなかったが、概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
異なるgRNAで編集した凝集胚の変異率および変異効率は、ターゲットとする遺伝子間で異なることから、キメラ胚の培養方法・培養条件を含め、変異効率を指標に検討する。また、ゲノム編集がんモデルブタ作成を目的に、ゲノム編集したキメラ凝集胚の移植を行い,腎臓特異的TP53遺伝子欠損キメラブタを作出する。作出したブタについて,病理組織学的検査および標的遺伝子の解析により腎臓がんモデルブタとしての評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により、国際学会への参加が中止になったことと、県内初の豚熱の発生で、レシピエントブタの移動が制限され、必要な頭数の購入が困難な状況となり、それに伴う消耗品の購入が減少したため残額が生じた。残額は次年度に繰り越し、実験を遂行する計画である。
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