研究実績の概要 |
本研究の目的は、脳薬剤送達(脳DDS)分子・技術の確立を実現するアプタマー分子の創製と蛍光分子標識によるその視覚的評価法の確立を目的とする。最終年度は、受容体介在性の経細胞輸送(RMT)を利用した脳へのDDS戦略実現の有力標的であるトランスフェリン受容体(TfR)やインスリン受容体(IR)を対象として、アプタマー分子の更なる選別と、同定分子のサイズ最適化(短鎖化)に取り組んだ。その結果、両受容体に対して特異的に結合する分子の同定に成功し、高い結合力を保持したまま短鎖化することができた。また、各受容体とその内在性リガンドとの結合への影響をSPR解析法にて調べた結果、IRに対するアプタマーは内在性リガンドの受容体結合に干渉しない分子であることが示唆された。このことから、今後この抗IRアプタマーを脳DDS分子として用いることとした。次いで、昨年度時点で、汎用される蛍光分子(Alexa670)を抗IRアプタマーの末端に標識した分子を化学合成し、ヌードマウスに投与(10 mg/kg b.w., i.p.)した後、摘出した脳組織において蛍光を観察することができたため、量子ドットでの検証に取り組んだ。その結果、量子ドットは標識効率が低く、また精製工程で核酸のロスも大きいことが分かった。そのため、核酸等の分子を量子ドットを介してin vivoイメージングするためには、効率の良い新たな合成方法、標識方法が大きな課題であることが明らかとなった。 今後、作製したアプタマー自体は通常の蛍光分子で脳組織への移行が確認できているため、本課題の重要な成果物となるアプタマー分子を用いて、脳DDS技術向上のための開発研究に引き続き取り組んでいく予定である。
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