研究課題
がん細胞では、浸潤・転移に象徴されるように細胞が高い運動性を獲得することが知られており、それらを抑える治療法の開発が課題である。テトラスパニンは、細胞膜4回貫通型の膜タンパク質ファミリーであり、増殖、運動、膜融合、シグナル伝達など様々な細胞の生理作用および恒常性維持に関与する分子オーガナイザーである。本研究では、テトラスパニンであるCD9と相互作用する制御分子EWI-2のアミノ酸配列を基にCD9結合性ペプチドを設計した。CD9結合性ペプチドを用いた細胞アッセイにより、がん細胞の遊走・浸潤活性の低下及びがん細胞におけるエクソソームの分泌・取込み抑制が確認された。そこで、CD9結合性ペプチドを利用した動物実験によるがん細胞の転移抑制活性を検討した。メラノーマ細胞をペプチドと1時間インキュベートした後にC57BL/6Jマウスのフットパッドに移植した。肺転移について24日後の肺小結節の形成割合を評価したところ、CD9結合性ペプチドではコントロールペプチドと比較して有意に形成の低下がみられた。また、がん細胞を移植したフットパッドでは、がん細胞の重量がコントロールペプチドと比較してCD9結合性ペプチドで増加が抑制される結果となった。フットパッド及び肺のHE染色においても、CD9結合性ペプチドを添加した際にコントロールペプチドと比較してがん細胞の拡がりが抑制された。この他、EWI-2のアミノ酸配列を基にCD81結合性ペプチドを探索した。CD9と同様にCD81結合性ペプチドをがん細胞に添加し、細胞トラッキングによる遊走距離及びスクラッチアッセイによる遊走活性を評価したところ、コントロールペプチドと比較して遊走活性の抑制が確認され、CD9結合性ペプチドと比較し同等以上の抑制効果が認められた。
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