現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表的ながん種について、サーベイした結果を述べる。プラズマ発光分析を用いた組成の結果によると、腎細胞がんと正常腎にはAl,Ca,Cd,Cr,Cu,Fe,K,Mg,Mn,Na,P,Pb,Znの濃度の違いがあり、その中でもP-31が特に異なっている。腎細胞がんには630ppm 含まれており、正常腎は43ppmである。また興味深いのはがんのステージによっても、組成が異なる。P-31はステージ1よりもステージ4の含有率が11倍高いことが分かっている。Pbの含有率は232倍である。 また、中性子放射化法により肺がん及び正常肺のサンプルに対して様々な元素の含有率について報告があったが、オーダーで含有率が異なる元素はなく、多くてSeが1.9倍程度であった。また含有量がppmオーダーと少なく、高速中性子による即発ガンマ線の検出を行う際に、照射体系を最適化する必要があることが分かった。一方でKは1000ppmオーダーと含有率が多いが、正常肺との差は80%程度であり、画像化できる可能性がある。 これまでは増加する元素について検討してきたが、がんの種類によってはZnやRbのように減少する元素も存在する。増加する元素と、減少する元素の比を取ることで、検出感度を増加できる可能性がある。今後はさらに元素のサーベイを継続し、適応するがんの種類を増やすこととした。 高速中性子による即発ガンマ線の画像化には5MeV以上の中性子で10^7から10^10 (n/s)の中性子生成量が必要であると先行研究で報告がある。そこで、放射線輸送計算コードPHITSを用いて、30MeV陽子入射ベリリウムターゲットから放出される中性子生成量を評価した。定格の1mAの電流値で10^14(n/s)の中性子が生成することを確認した。また、本研究の照射場はエネルギーを低減させるために、180度方向の中性子の使用を考えているが、高速中性子による即発ガンマ線の画像を得るに十分な強度であることを確認することができた。
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