研究課題/領域番号 |
22K19944
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
高橋 葉子 (遠藤葉子) 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (30453806)
|
研究分担者 |
中南 秀将 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (20548515)
|
研究期間 (年度) |
2022-06-30 – 2025-03-31
|
キーワード | 超音波 / 肺 / ナノバブル / 抗体修飾 |
研究実績の概要 |
これまでに超音波応答性ナノバブルを開発し、超音波照射の併用により、種々の組織への遺伝子・核酸デリバリーおよび超音波造影が可能となることを示してきた。肺組織は、内部の空気の存在により超音波が適用し難い組織とされてきたが、炎症時の滲出液の存在により、疾患部位のみ超音波の到達性が変化することが考えられる。そこで本研究では、肺炎症時の診断・治療におけるナノバブルと超音波併用システムの可能性を検証するとともに、炎症部位へ集積性を有する核酸搭載ナノバブルの開発も目指している。 本年度は、マウス肺への超音波照射の方法(向き)について、正常マウスを用いて検証を行った。尾静脈よりエバンスブルー色素とナノバブルを投与し、肺への超音波照射を3方向から行い、エバンスブルーの血管外漏出からその影響を評価した。その結果、ある方向から照射した場合において、超音波照射部位特異的な血管透過性の向上に伴うエバンスブルーの漏出が認められた。詳細な解析はまだ行えていないが、本効果は外表面に近い胸膜のみである可能性が高い。しかし肺への超音波照射により血管透過性の向上を可能とすることを示す有益な成果といえる。炎症により滲出液が存在する場合には、超音波の到達性が変化し得ることから、照射条件の最適化は今後モデルマウスを用いて検討を進める予定である。 また、炎症部位へ集積性を有するナノバブルの開発に向け、ナノバブルの基盤であるポリエチレングリコール修飾リポソームに対し、抗体修飾を施し、その物性評価、およびフローサイトメトリーによる炎症性細胞への特異性評価を行った。現段階では、抗体修飾に伴う特異性が若干認められる程度であり、種々の調製条件の最適化を引き続き進めていく。特異性の高いリポソームの調製条件が絞られてきた段階で、超音波造影ガスを封入してバブル化し、ナノバブルとしての特異性評価、および核酸搭載を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
正常マウスを用いた肺への超音波照射の検討により、肺表面において超音波が血管内のナノバブルへ影響を与え得ることが示された。炎症部位へ集積性を有するナノバブル開発に向け、抗体修飾リポソームの開発を進めているが、示された特異性が顕著なものではない点、また予定していた3次元培養肺組織を用いた検討を開始できなかった点から、やや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の検討において、正常マウスの肺組織への超音波照射を試み、影響し得ることは示されたので、次年度は疾患モデルマウスを用いた超音波照射条件の検討を進めていく予定である。モデルマウスの作製条件、疾患進行状況の評価法などの検討も同時に進め、後に行う治療システムの評価法に繋げていく。また、モデルマウスへの超音波照射条件を検討するにあたり、滲出液が超音波の到達性に与える影響について、3次元培養肺組織を用い検討を行う。血管を模倣した領域に蛍光化合物とナノバブルを添加し、肺胞内部側の溶液の有無により、血管(体外)側から超音波を照射した際の各構成細胞への影響を蛍光顕微鏡、あるいはフローサイトメトリーにより評価する。さらに、炎症部位へ集積性を有するナノバブルについて、抗体修飾リポソームのバブル化(超音波造影ガスの封入)を行い、炎症性細胞への特異性、疾患モデルマウスにおける肺への集積性などの評価、核酸搭載法の確立を進める。本研究遂行により、肺への超音波照射、および肺疾患に特化したバブル製剤開発の両技術を融合することで、ナノバブルと超音波併用による肺組織への核酸導入とそれによる疾患治療法開発への応用に繋げていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、予定していた3次元培養肺組織を用いた検討を進めることができなかったため、一部未使用額が生じた。これは安定培養条件の再検討が必要であったためであり、次年度には開始予定のため、次年度分と合わせ当該実験の消耗品等に充当することとしている。
|