• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実績報告書

布施が結ぶ社会:『マハーバーラタ』第13、14巻の研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K19953
研究機関東京大学

研究代表者

高橋 健二  東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 助教 (30963227)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワードマハーバーラタ / 写本研究 / 布施 / バラモンとクシャトリヤ
研究実績の概要

本研究の目的は、古代インド叙事詩『マハーバーラタ』の第13, 14巻の読解を通して、その編纂時期(BC2C~AD4Cごろ)における布施の社会的役割を考察することである。本年度は特に第13, 14巻における布施の役割及び第13, 14巻の成立史について研究を行った。
第14巻では、ユディシティラ王が行った布施が、落穂拾いによって清貧の生活を送るバラモンによる布施と対比されるが、第13, 14巻において、ユディシティラおよび落穂拾いを行うバラモンについて様々な異なる評価がなされる。本研究では、ユディシティラとバラモンが対比される当初の意図はバラモンの王族階級に対する優位性を示すことにあったことを示し、後代の挿入と思われる部分において、無私無欲の精神に基づいて布施を行うことや、バラモンの宗教的権威を前提として王族が社会を支配するといった概念が含意されるようになったことを示した。また第13巻では様々な布施の議論が展開されるが、先行研究では第13巻における布施の議論は、第13巻に先行する第12巻における諸説を敷衍したものであると考えられてきたが、第13巻の内容はむしろ第14巻における布施の諸問題についての解説として理解すべきであることを示した。
また第14巻の成立史について、先行研究では第12巻と第14巻における内容的重複から、第12巻の方が成立が早いと考えられてきたが、その内容的重複のなかにも第12, 14巻で意味づけが異なることや、『マハーバーラタ』編纂途中に書かれたと思われる現存最古の巻名リストには第12巻と第14巻が併記されていることから、両巻について現段階で前後関係を決定することはできないことを明らかにした。
さらに本研究の過程で明らかになった『マハーバーラタ』写本伝承や口頭伝承の諸問題について、論文やシンポジウムでの発表という形で研究成果を公表した。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件)

  • [雑誌論文] カルナとアルジュナ,そして『マハーバーラタ』研究のこれから : 川尻道哉『カルナとアルジュナ?『マハーバーラタ』の英雄譚を読む』書評論文2024

    • 著者名/発表者名
      髙橋 健二、川村 悠人
    • 雑誌名

      比較論理学研究

      巻: 21 ページ: 65~112

    • DOI

      10.15027/55158

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Double Cleasing of Yudhisthira's Sorrow/Sin: A Study of the Santiparvan and the Asvamedhikaparvan of the Mahabharata2024

    • 著者名/発表者名
      Kenji Takahashi
    • 雑誌名

      Journal of Indian and Buddhist Studies

      巻: 72 (3) ページ: 973-978

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 『マハーバーラタ』インド南方伝承に関する研究動向:Mahadevan説についての覚書2024

    • 著者名/発表者名
      髙橋健二
    • 雑誌名

      梶原三恵子編『インド語インド文学拾遺2024』

      巻: 2024 ページ: 15-30

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The "Mental" (Manasa) Self and Manasa the Creator in the Bhrgubharadvajasamvada (Mahabharata 12.175-185)2023

    • 著者名/発表者名
      Kenji Takahashi
    • 雑誌名

      Journal of Indological Studies

      巻: 34/35 ページ: 15-37

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 『マハーバーラタ』の神話的構造をめぐって:沖田瑞穂著『マハーバーラタ、聖性と戦闘と豊穣』みずき書林(2020)書評論文 (1)2023

    • 著者名/発表者名
      髙橋 健二
    • 雑誌名

      南アジア古典学

      巻: 18 ページ: 121-145

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Draupadi's Polyandry Revisited2023

    • 著者名/発表者名
      Kenji Takahashi
    • 雑誌名

      Studies in Indian Philosophy and Buddhism

      巻: 31 ページ: 15-26

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 『マハーバーラタ』写本研究の最前線2024

    • 著者名/発表者名
      髙橋健二
    • 学会等名
      HMCオープンセミナー
  • [学会発表] 『マハーバーラタ』の口頭伝承的特徴について2024

    • 著者名/発表者名
      髙橋健二
    • 学会等名
      公開シンポジウム「『マハーバーラタ』研究の最前線―伝承の形成と物語の展開―」
  • [学会発表] What Can We Learn from the Mahabharata? Outsiders, Kingship, Priesthood and the Making of the Hindu World2023

    • 著者名/発表者名
      Kenji Takahashi
    • 学会等名
      Myth and Science in Ancient World: Novel Research from Eurasia
    • 国際学会
  • [学会発表] The Path to Paradise Begins in Hell: A Study of the 7th Chapter of the Sivadharmottara2023

    • 著者名/発表者名
      Kenji Takahashi
    • 学会等名
      The Conference of Heavens and Hells: Life after Death in Religious Traditions from South Asia
    • 国際学会
  • [学会発表] 『マハーバーラタ』第12-14巻成立史再考2023

    • 著者名/発表者名
      髙橋健二
    • 学会等名
      第74回日本印度学仏教学会
  • [学会発表] 『マハーバーラタ』における落ち穂拾いの実践2023

    • 著者名/発表者名
      髙橋健二
    • 学会等名
      北海道大学文学部での講演

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi