研究課題
本研究では、「神聖空間」という概してビザンチン美術の枠組みにおいて用いられてきた理論を初期ネーデルラント美術に応用し、聖なる原型〈プロトタイプ〉の複製が、世俗空間を唯一無二の聖なる空間に変換するために果たした固有の役割について分析した。ベルギー・オランダを中心とした作品の実見調査と古文書調査を柱とし、現存する、或いは資料から再構成可能な聖域(聖堂・巡礼地など)とそれらの内部に設置された芸術作品やその場で行われていた儀礼を分析し、聖なる空間が創出されるプロセスを検証した。*最終年度の研究成果本研究課題である、ネーデルラントにおけるイメージと神聖空間の事例研究として、ブリュッヘのアドルネス一族礼拝堂(エルサレム礼拝堂)に着目した。同礼拝堂には聖地エルサレム、特にキリストが磔刑に処されたゴルゴタの丘を想起させる祭壇衝立が設置されている。このゴルゴタの丘の「コピー」から更に霊感を得た芸術作品として、ヒエロニムス・ボス作《マギの礼拝三連画》閉翼時に描かれた「聖グレゴリウスのミサ」を指摘し、更にアドルネス一族と三連画作品の注文主の接点を明らかにした。本事例研究の成果は、第76回美術史学会全国大会で口頭発表し、2024年内に国際共著の一章として刊行される。*研究期間全体の成果本研究課題の成果を複数の国際・国内学会にて発表し、一部の事例研究は国際共著として2024年内に刊行される。また、ビザンチン建築史、エチオピア建築史、仏教圏文化史の専門家を交えた比較共同研究も行い、時代・地域を越えて神聖空間/ヒエロトピー研究が多くの視座を与える研究領域であることを確信した。現在新たに複数の事例研究にも着手しており、最終年度以降も、「神聖空間」という、未開拓の新たな研究領域と、イメージの関係に関して研究を継続していく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Anselm Adornes. Art, Commerce and Piety in Fifteenth Century Scotland, Bruges and the Mediterranean
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