本研究は,メタ倫理学における錯誤説や道徳懐疑論を前提として,合理的なフィクションとしての道徳の可能性を探究するものである.とりわけ,フィクションとして道徳を導入する際に,革命的表出主義と呼ばれる見解に依拠する可能性の是非について検討した.これは,我々は道徳語の使用を,メタ倫理学的表出主義に沿うかたちで変更することを主張するものである.表出主義にはさまざまな利点があるとはいえ,Frege=Geach問題というきわめて深刻な論理的問題が指摘されてきたが,本研究ではこの問題に対してAllan Gibbardの意味論を一般化するという新しいアプローチを試みている.
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