研究課題/領域番号 |
22K19960
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
夫 鍾閔 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (50966439)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | ポストコロニアリズム / ポストコロニアル / 脱植民地主義 / 韓国思想 / 韓国ナショナリズム / ポストモダニズム / 親日問題 |
研究実績の概要 |
現在、欧米と日本のポストコロニアリズムの潮流を整理検討するとともに、こうした潮流が韓国においていかに受容され、またその後、いかにして独自の思想を構築するようになったかを検討している。 西欧のポストコロニアリズムの典型的な議論は、ポストコロニアリズムの代表的な論者であるサイード、バーバー、スピヴァクに焦点を当てた後、彼らが依拠するフーコーとデリダの思想に注目することによって、ポストコロニアルの議論をポストモダニズムの一種として捉えている。ところで、韓国におけるポストコロニアリズムの主流は、ポストコロニアリズムをポストモダニズムの一種とする見方を拒否すると同時に、ナショナリズムと親和性のある議論を展開している。このような背景として韓国のポストコロニアリズムが主にフランツ・ファノンをはじめとする第三世界主義の思想的影響を受けていることに着目し、韓国におけるファノンの受容史をポストコロニアリズムの文脈において位置付ける作業を行っている。特に、ポストコロニアリズムが受容される文脈において具体的にどのように変容されたのかを検討するとともに,その変容においていかなる新たな論理が模索されたかを考察している。最終的には、「親日」問題などに焦点を当てて、新たなポストコロニアリズムの論理がどのように「親日」問題を克服しようとしたのかを分析し、その意義と限界を明らかにすることを目標として研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究では、韓国の文学研究者たちによるポストコロニアリズムの変容について取り上げて検討してきた。文献調査するなかで、韓国において欧米のポストコロニアリズムが輸入された後、その反応として韓国の国文学批評の潮流の一つである「民族文学論」をポストコロニアリズムに理論的に結びつけようとした議論はこれまで少なくなかったということが分かった。去年、いかにしてこのような現象が可能だったのかを知るために、フランツ・ファノンの思想の影響を念頭に置きながら韓国文学史における「民族文学論」の位相を再検討し、その成果としてこのテーマについて学会報告も行った(社会思想史学会2022年度大会)。
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今後の研究の推進方策 |
去年の出張調査に引き続き、韓国において、民族文学論および第三世界論についての文献調査を進める予定である。文献調査が終わり次第、国際学会での研究報告を行う予定であり、その報告を経て国際学術誌への投稿も行う予定である。
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