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2022 年度 実施状況報告書

モード2科学としての社会実験の科学哲学的分析:科学における不知と向き合うために

研究課題

研究課題/領域番号 22K19966
研究機関富山県立大学

研究代表者

石田 知子  富山県立大学, 工学部, 講師 (70963411)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワード無知 / 不知 / ignorance
研究実績の概要

無知(ignorance※)とは、元々は概ね「単なる知識の欠如」、又は歪められて知識を持つことを意味してきた。社会学・歴史学・哲学の各領域で、多岐にわたる現象が「無知」という語の下で分析されている。本年度の研究では、無知の概念分析を試みた。
分析の際に重要な区別に、「知らないということを知っていること」と「知らないということを知らないこと」がある。すなわち「知らないこと」に階層があるという考えである(Smithoson 1989, Ravetz 1993など)。ここにさらに「unknown knowns」という概念も加わり、近年では、知っていることと知らないことの階層性をknown knowns、known unknowns、unknown knowns、unknown unknownsの四つの区分で理解する向きもある(Bammer, Smithson and Goolabri Group 2008)。このうち、unknown knownsは、もとは暗黙知を指すものとされていたが、Rayner(2014)の分析により、特定の組織などにとって不快とみなされ、なかったことにされる知識も含むようになった。
明確な知識を持たないという状態は様々な形態を取りうる。さらには様々な事情から、特定の知識を持っていることをオープンにしないこともある。これらの状態はみな、しばしば無知として研究されてきた。すなわち、上記の4区分のうち、known knownsを除く3つは無知とされる現象に関連しており、無知はそれらを広く指す語であるように見える。よって、「無知」は、意味が曖昧であるがゆえにコミュニケーションを成立させる語(Keller 2000)として理解すべきであるだろう。

※申請段階では「不知」と訳したが、以下ではより一般的な訳語である「無知」を採用したい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

known knowns・known unknowns・unknown knowns・unknown unkonwnsという4つの区分は、モード1科学とモード2科学における無知のあり方の相違を分析する際においてとくに有用だと考えられる。中でも、unknown unknownsに関連する「無知の無知(ignorance of ignorance)」ないし「無知の二乗(ignorance-squared)」(Ravets 1993)や、unknown knownsに関連する「不快な知識uncomfortable knowledge」など、今後の分析に必要な概念が明らかになった。

今後の研究の推進方策

今後の研究では、モード1科学とモード2科学が陥りやすい無知のあり方を、上記の4区分を足掛かりに分析を行う。その際、モード2科学の実例として主に社会実験を挙げながら行う予定である。
モード1科学において陥りやすい無知の分析は、ラベッツの「無知の二乗」概念を足掛かりにして行う。ラベッツによれば、無知の二乗は通常の科学的知識生産の副産物である。すなわち、彼は無知の二乗を、トマス・クーンのいう通常科学におけるパズル解決という営みの外にある問題であると考えた。本研究ではラベッツの考えを批判的に発展させ、unknown unknownsとモード1科学の関係を考える。
モード2科学、とりわけ社会実験においては、多様なステークホルダーを巻き込んだ知識生産が期待されているため、科学者コミュニティの外の視線が常に入ることになる。そのため、ラベッツの言う無知の二乗は起こりづらくなると考えられる。しかしながら、様々な思惑を持ったステークホルダーが参加するため、特定の知識は一部のステークホルダーにとってレイナーのいう「不快な知識」になりやすくなると考えられる。そのため、モード2科学における無知のあり方の分析は、「不快な知識」概念を使いながら行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

書籍の購入額が想定していたより少なかったため。
次年度使用額は、予定通り書籍購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 科学における不知2022

    • 著者名/発表者名
      石田知子
    • 学会等名
      日本科学哲学会

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公開日: 2023-12-25  

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