本研究は、第一次世界大戦中に中国・青島(チンタオ)から日本へ収容されたドイツ軍捕虜(俘虜)による音楽活動に着目し、それがどのような歴史的意味を持っていたのかを明らかにすることを目的とする。2年間の研究成果として、以下の点が明らかになった。(1)捕虜の音楽・文化活動に対する日本陸軍側の姿勢は、約5年の収容期間の中で規制対象から収容所の安定的な運営に欠かせないものへと変化したこと。(2)捕虜による音楽活動は、青島時代の軍楽隊の音楽実践を直接的に受け継ぐよりも、近代ドイツのコンサート文化を反映するものであること。(3)名古屋収容所において、収容末期に音楽を含む演劇作品が上演されていたこと。
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