この研究成果はまず、熊十力の『新唯識論(語体文本)』の「成物」章を解釈しました。この章は熊十力の哲学の発展を示したものであるにもかかわらず、十分に研究されていません。従って、文献の解釈は従来の空白を埋めると同時、熊十力の哲学理論を解明することにも寄与できます。 そして、熊十力の哲学を二〇世紀の中国啓蒙思潮に置いて考えるとき、ベルクソンの哲学やカントの哲学などのような西欧の哲学は非常に重要な位置を占めていることはわかってきます。というのも、これらの理論は東アジアの伝統文脈にある自発的な近代的思惟の形成にも関連しているからです。この現象は哲学の普遍性問題を議論するさいに極めて重要なモデルとなります。
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