この科研費プロジェクトでは、既存のドキュメンタリー写真史では中心に扱われてこなかった集団によるドキュメンタリー写真の実践例を考察した。具体的には、ドキュメンタリー写真の形式が大きく変化した1920-30年代と1960-70年代の諸団体に焦点を当てた。こうした写真団体の実践・作品を分析することで、その活動ごとの特殊性と共通性を提示できた。これにより、労働者や女性といった抑圧される人々自身がみずからの表象を作り出す集団的なドキュメンタリー写真の営為の意義を評価することができ、主流のドキュメンタリー写真史のなかではそれほど扱われてこなかった問題系を考察することができた。
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