研究課題/領域番号 |
22K19971
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研究機関 | 二松學舍大學 |
研究代表者 |
和久 希 二松學舍大學, 文学部, 講師 (40965927)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 魏晋玄学 / 玄言詩 / 荘子 / 周易 / 何劭 / 王弼 / 韓康伯 |
研究実績の概要 |
本研究は、西晋・東晋の文学史上に出現した「玄言詩」の隆盛に着目し、それを先秦時代の古典資源(『周易』『老子』『荘子』)との関連において理解しようとする先行研究とは異なり、より直近の魏晋交替期に盛行していた「魏晋玄学」の思想史的文脈に接続させようとするものである。すなわち「玄言詩」を「魏晋玄学」の歴史的展開相と見ることで、魏晋期の思想史と文学史をなめらかに接続させ、統合的に把握することを目的とする。令和4年度は、まずは西晋の重臣であった何劭についての検討をおこなった。何劭「贈張華」詩は『文選』李善注以来『荘子』をふまえて制作されたことが定説となっており、本研究もそれを認めるものであるが、ただし当該詩は『荘子』を背景に持ちつつも、その言辞において三国魏の王弼による議論を反映しているところがあった。実際に何劭は「荀粲伝」「王弼伝」を著すなど、魏晋玄学の継承者といえる一面を有している。本研究では上述の資料とそれ以外の詩文を横断的に検討することで、彼の詩作と表現が魏晋玄学のひとつの変奏であることを導出した。かかる主題についてはすでに全国学会で口頭報告をおこない、また学術論文として研究成果を発表した。次に、魏晋玄学自体の歴史的推移を明らかにするため、魏晋玄学の旗手とされる王弼とそれを継承した東晋・韓康伯の『周易』解釈の質的差異を検討した。両者の比較検討にはつとに加賀栄治に代表される古典的研究成果があり、資料的な整理は尽くされている感があるが、本研究では、同一の古典に注釈を施した両者の形而上学的議論が各々力点を異にしていることに注目し、それを思想史上の動的展開として捉え直した。これについてはすでに国内シンポジウムでの口頭報告があり、次年度以降に学術論文として発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「魏晋玄学」と「玄言詩」を架橋する人物として、西晋の何劭に注目し、その思索と表現を明らかにできた点、「魏晋玄学」の内的展開として王弼と韓康伯による形而上学の微妙な力点の違いを析出できた点、思想分野・文学分野にまたがって数多くの原典資料および研究成果を蒐集できた点。これらの諸点により、第1年度の研究実施状況としてはおおむね順調に進展したと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
すでに蒐集した資料において、本研究は東晋・ユ闡に注目する。彼は東晋の玄言詩を代表する詩人であるとともに、周易、荘子に関する文章を残しており、おそらく彼の平生にあっては、玄学の理論的追究と詩作とが分かちがたく結びついていたと思われるからである。本研究では今後、ユ闡の著作を取り上げて、魏晋玄学と玄言詩を一貫したものとして把握する視座を提示したいと考える。
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