研究課題/領域番号 |
22K19972
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研究機関 | 武蔵野美術大学 |
研究代表者 |
大田 暁雄 武蔵野美術大学, 造形学部, 准教授 (80964254)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | ダイアグラム / 主題地図 / 視覚表象 / 分類 / デザイン学 / 科学的グラフィック |
研究実績の概要 |
本研究は、図(科学的グラフィック)の体系的な分類法の不在を解決するために、①既存の図の分類法の批判検討と、②図のデザイン学的分析を行い、それらを総合した上で③図の分類法と分類体系の構築を試みるものである。各専門分野で別々に試みられてきた図の分類法に一貫した指針を与え、ダイアグラム・地図デザイン教育に役立てることのできる論理的基盤を形作ることを目標としている。 初年度は、科学的グラフィックの分類法の研究の準備段階として、まず「①既存の分類法の批判検討」の対象となる既存の分類方法について資料収集を行い、入手できたものに関しては順次レビューを開始した。 次に、「②図のデザイン学的分析」に関しては、分類の対象となる資料の収集(特に主題地図関連資料)と整理を行い、分析を進めている。特筆すべき事項として、20世紀前半に体系的な図表言語体系を構築したオットー・ノイラートの図表集『Gesellschaft und Wirtschaft(社会と経済)』(1930年)の詳細な観察を行い、サイン体系の記号論的・修辞学的分析や、主題地図の地図学的分析(投影法、起伏表現等)を行った。また、同じノイラートのデザイン規則についての理論書『International Picture Language』(1936年)や、視覚的教育資料、百科全書についての論文を翻訳し、理解の助けとした。これらは図像読解の論理的記述の範例とすることができるだろうと考えられる。さらに、研究の主たる分析対象ではないが、東洋の図像群(宗教的図像群、コスモロジー、地図等)についても資料を収集し、知見を広めている。 「③図の分類法と分類体系の構築」については次年度に本格的な作業に入る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前項で述べたとおり、本研究は、図(科学的グラフィック)の体系的な分類法を構築することを目的としている。初年度は期間が約半年と短かったこともあり、分析対象となる資料群の収集と、分類法のレビュー作業、図像分析作業に専念した。いわば予備的・準備的な作業段階と言えるが、順調に資料収集と整理は進んでおり、分析対象となる資料群全体の概観を捉えられるようになってきた。また、図のデザイン学的分析についても、記号論・修辞学の援用や、具体的な図像分析を通じて、分析方法の理論的基礎を築くことができた。これにより、次年度は最終的な図の分類法と分類体系の構築へと移行できるだろうと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前述の通り、「①既存の図の分類法の批判検討」と「②図のデザイン学的分析」については基礎が整いつつあるので、今後は作業をさらに本格化し、資料の収集と整理、レビュー、分析を進めていく。年度前半にはこれらの作業に目処を付け、「③図の分類法と分類体系の構築」に取り掛かる予定である。その際、主題や時間・場所による分類ではなく、あくまで視覚的な方法論に基づいた分類法を考案することが目標である。①で洗い出した既存の分類法の問題点、②の分析結果を考慮しながら新しい分類法を構築したい。さらに、近現代における科学的視覚化についての「年表」と「目録」を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に購入予定であった「ダイアグラム・主題地図関連資料」について、購入希望資料を実際に全て購入できたわけではなかったため、次年度に繰り越す形で引き続き購入を狙っている。
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