本研究の目的は、ルイ・イェルムスレウの言語論に照らすことで、20世紀後半のフランス思想の展開を体系的に研究することである。研究計画では、2023年度は、(1)イェルムスレウ言語論を構造主義的に受容して批判した思想の検討と、(2)イェルムスレウ言語論を非構造主義的に受容した思想の研究を予定していた。 2023年度も、前年度と引き続き計画の通りに研究を遂行し、以下の成果を得た。まず、上記の(1)にかんして、イェルムスレウ言語論に照らして、とくにジャック・デリダの思想を読み解くことで、その構造主義的な解釈と批判の内実と意義を検討した。また、上記の(2)にかんしては、イェルムスレウ言語論に照らして、ドゥルーズとガタリの思想を読み解くことで、その非構造主義的な解釈の内実と意義を検討した。 以上の具体的な研究成果としては、まず、デリダと、ドゥルーズとガタリとの対照的な評価に着目した研究論文を投稿しており、2024年度の学会機関誌での掲載が決定している。また、とくにドゥルーズとガタリのイェルムスレウ受容の意義については、2023年に上梓した単著で包括的かつ体系的な仕方で成果をまとめている。 これらに加えて、2023年度から行ってきたイェルムスレウ自身にかんする研究成果として、2023年度に行ったシンポジム「イェルムスレウとフランス現代思想」での発表をもとにした論考を水声社のweb雑誌に寄稿したほか、イェルムスレウの翻訳である『新言語学試論』を水声社より2024年5月に刊行する。
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