研究課題/領域番号 |
22K19986
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
菊池 そのみ 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (70964807)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | 日本語史 / 従属節 / 付帯状況節 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本語の「~て」、「~つつ」、「~ながら」のような動作が行われる際の主体や対象の付帯的な様子を表す節(=付帯状況節)の構造変化を通時的な調査に基づいて実証的に解明することである。今年度は主に(1)「~て」、「~つつ」、「~ず」、「~ながら」に関する用例調査・分析、(2)「付帯状況」という術語・概念に関する研究史の整理、(3)中古和文資料のデータベース構築の3点に取り組んだ。 (1)については、既に分析を進めていた「~て」、「~つつ」に加え、「~ず」を対象とした用例調査を実施し、総合的な考察を試みた。具体的には、付帯状況を表す非対格自動詞節のうち節内に対象主語を含む用例を取り上げ、上代から中世にかけての用例調査を実施し、分析を行った。これらの調査・分析の結果を論文にまとめ、査読付き全国学会誌に投稿した。また、「~ながら」についても用例調査を実施し、(1)の各形式との比較を行うために考察の観点を整理した。 (2)については、日本語学において「付帯状況」という術語がどのように用いられてきたかということを辿り、整理を試みた。特に分析の対象とする形式ごとの差異や「付帯状況」の英訳に関する課題について検討を実施し、論文として公表するための準備を進めた。 (3)については、『日本語歴史コーパス』等のデータベースに収録されていない中古和文資料のひとつである『夜の寝覚』を対象として、データベース構築に着手した。具体的には電子テキストを作成し、形態素解析を施し、形態素解析の誤りを人手で修正する作業を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は(1)「~て」、「~つつ」、「~ず」、「~ながら」に関する用例調査・分析、(2)「付帯状況」という術語・概念に関わる研究史の整理、(3)中古和文資料のデータベース構築にそれぞれ取り組んだ。これらのうち(1)は論文誌に投稿済みであり、(2)は論文としてまとめるための整理が概ね完了しており、(3)はコーパス構築が進んでいることから、全体としては「おおむね順調に進展している」と言える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は(1)古典語の付帯状況節における格付与に関する分析、(2)古典語における従属節分類の再検討の2点に重点的に取り組み、それぞれの成果を公表することに注力する予定である。また、『夜の寝覚』のコーパス構築を進めると同時に、この構築状況について学会発表等においても公表することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
「次年度使用額」が生じた理由は、コーパス構築作業を依頼することができる作業者の人数及び作業時間が想定よりも少なく、謝金分が減額となったためである。「次年度使用額」はコーパス構築作業のための謝金に充てる予定である。
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