本研究では、他動詞「取る」を前項とする複合動詞の歴史的変遷について、「取り持つ」を中心に調査を行った。古代語における「取り持つ」は《物体を手にする意》と《政事を行う意》を有していたが、前者の意は歴史的に失われ、現代語では後者に由来すると思われる《人間関係などを仲介する意》を主に表す。調査の結果、この変化が完了したのは中世後期から近世期であること判明した。これは先行研究において複合動詞の内部構造の変化が起こったとされる時期とほぼ一致することから、内部構造の変化と意味体系の変化が関連している可能性が示唆される。同様の結果が「取り持つ」以外の「取り+動詞」でも見られるのか、今後の課題である。
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