研究課題
本研究では、日本語母語話者が韓国語の破裂子音の発音を聴き分けられるようになるためのより効果的な訓練方法を見つけることを目的として、声の高さに注目しながら発音を聴き分ける訓練によって、日本語母語話者は聴き分けテストの成績が向上するとともに、声の高さに同期して生じる神経振動が韓国語母語話者のものに近づくかを調べた。実験では、日本語母語話者を二群に分け、訓練の際に片方の群には声の高さに注目するよう助言し、もう片方の群には声の高さに関する助言はしなかった。韓国語母語話者群には脳波測定を伴う聴き分けテストのみを実施した。昨年度は、韓国語母語話者の参加者が確保できない可能性や日本語母語話者が予定の変更により訓練日に参加できないことが懸念事項としてあった。その対策として本年度は、韓国語母語話者はSNSのコミュニティーを見つけることで人数を確保でき、日本語母語話者への訓練はオンライン訓練の環境を構築することで柔軟に実施できた。日本語母語話者と韓国語母語話者を合わせて合計49名の参加者に2回ずつ脳波測定を実施し、データを収集することができた。データ分析の結果、声の高さに注目するよう助言した群としなかった群の両方とも訓練を通じて聴き分けの成績が韓国語母語話者レベルまで向上した。これは短期集中的なオンライン訓練で韓国語破裂子音の聴き分けの習得ができる可能性を示唆する。声の高さに注目することによる効果は、訓練の効果の持続性やフレーズの聞き取りなど、より高い難易度の課題によって検討が必要であると考えられる。脳波では、各発音の声の高さの下降または上昇の遷移に沿って生じる神経振動が観察できた。韓国語母語話者群より日本語母語話者群のほうが、声の高さが遷移する部分よりも一定な部分で神経振動の位相同期度が高く、訓練によってそれが減少する傾向が見られたが、詳細な統計学的検討は現在行っている。
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