2023年4月から2024年3月までの本年度では主に先行研究の整理と言語資料の分析に取り組み、また論文投稿と学会発表を行った。最終年度であるが、生活と仕事の環境が大きく変化し、研究計画に大幅な遅れが出た。 先行研究の整理では、本研究課題に関連する幅広いテーマを対象に近年の研究成果と研究状況の把握に努めた。イベリア半島の先ローマ期言語の分布と言語的特徴、イベリア半島のローマ・ラテン語化、ビシゴード王朝とスエビ王朝の社会言語的状況およびその言語的特徴、ラテン語・中世アンダルシアロマンス語・ガリシア語・ポルトガル語・スペイン語・アストゥリアス語・アラゴン語・カタルーニャ語・ガスコーニュ語における/v/などについてである。 前年度のフィールドワークで収集した言語資料の分析を行い、一部を完了した。具体的には、ガリシア地域の一部地域とカンタブリア地域の音声状況のデータを基礎的な形でまとめることができた。また、分析を進める上での問題として、一部の地域では参照する言語資料に応じて地理的な音声記述が異なることがわかった。 本研究課題と密接に関係する語源Fの音変化に関する研究成果の一部をまとめた論文がスペイン語史第12回国際大会の議事録で採択された。 情報交換と研究動向の把握を目的に2023年5月開催の日本ロマンス語学会第61回大会に参加した。また、同年10月に開催された日本イスパニヤ学会第69回大会にて発表を行い、祖語ラテン語のF音の変化に関する申請者のこれまでの研究を基盤に先行研究の問題点を指摘することで、従来とは異なるロマンス語言語学の視点から /v/ の不在問題に取り組む必要があることを明らかにした。
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