研究課題/領域番号 |
22K20015
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
岩本 浩樹 茨城大学, 人文社会科学部, 講師 (20961816)
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研究期間 (年度) |
2022-08-31 – 2024-03-31
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キーワード | イギリス・ロマン主義 / 姉妹芸術 / エクフラシス / ベンジャミン・ヘイドン / ジョシュア・レノルズ / ウィリアム・ワーズワス |
研究実績の概要 |
当該年度における研究成果としては、学内紀要への投稿論文が1本(日本語)そして国内および海外での口頭発表が2件(いずれも英語)ある。これにくわえて、イギリスのラウトレッジ (Routledge) 社より出版予定の論文集に1本(英語)寄稿することになっており、現在は原稿の受理が完了し、出版に向けての作業を進めている最中である。 以下では投稿論文と口頭発表に関して、その内容と意義をまとめる。 まず投稿論文では、詩人ウィリアム・ワーズワスの作品のなかでも古くより人口に膾炙してきた章句 (wise passiveness) の日本語訳に関して、新たな提言をおこなった。過去およそ1世紀にわたる当該作品の日本語訳を可能なかぎりすべて調べ上げ、いずれも本質的に詩句の重層的語感を汲み切れていない点を指摘した。具体的には、予弁法 (prolepsis) という新たな観点から当該作品を読み直し、ロマン主義時代の文章作法の複雑性にこれまで以上の注意を向ける結果となった。 次に口頭発表においては、いずれも、ロマン主義時代の文芸の交わりについての議論を深めることとなった。東京大学において催された研究発表会では、画家ベンジャミン・ヘイドン (Benjamin Haydon) の足跡を当時の歴史的・地理的・文化的背景を踏まえながら考察し、これまでやや等閑視されてきたその功績に目を向けた。また、ポーランドのヤギェウォ大学での口頭発表では、視点をさらに拡げ、初代王立芸術院院長のジョシュア・レノルズ (Joshua Reynolds) からの影響、ひいてはルネサンス以降のヨーロッパの美学的発展という文脈におけるヘイドンの位置づけについて、一次資料の精緻な分析にもとづく検証をおこない、多角的な議論を進めた。 なお、ラウトレッジ社より出版予定の論文は、上記2回の口頭発表の内容を発展させたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記のように、すでに発表した論文1本にくわえて、海外の出版社から上梓される論文集に寄稿予定であることがまず現状としてある。さらに、海外の学術雑誌への投稿も2本検討しており、いずれも、早ければ2023年度中に出版されることが見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
「研究活動スタート支援」という項目の性格上、そもそも、研究者としてはまだ駆け出しの位置にいる。学内校務やその他の教育業務に慣れることで、さらに研究業務に力を注げる環境ができると期待される。 その前提で、日本国内にとどまらず、引き続き海外への発信(英語)を積極的におこなっていく所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
Amazonを通して海外の書籍取扱店に中古本を注文したが、在庫切れを含む理由で品物が届かないという事例が複数あった。したがって、次年度以降の書籍購入費に充てる計画である。
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