Hermannの法則に違反する詩行は従来,(1)その位置の前後にも単語末が置かれているので,違反している位置に単語末が置かれていることによる違和感が緩和されている,あるいは,(2)その詩行が意図的にぎこちない詩行としてつくられていると説明されてきましたが,違反するとされてきた詩行のうちの多くが,実は違反しておらず,これらの説明が必要でないことが示されたことになります.これにより,ホメーロスら叙事詩人が,どのような詩行を美しいと考えて,単語を詩行中に配置していったのか,叙事詩の作詩法の一端をより明らかにすることができたと考えます.
|