中世後期から近世初期における武家の文芸がどのように展開したのか、この時期を代表する武家上杉氏の文芸活動を中心に明らかにした。具体的には、連歌・和漢聯句の創作時に上杉氏の家宰直江兼続が参照していたと思しい『直江韻書』と、武家らの指導的立場にあり直江と昵懇であった連歌師里村紹巴に関係する論書『紹三問答』を分析の対象とした。前者は本研究補助により内容分析の素地が整った。後者は、諸本全ての調査及び紙焼き収集が完了し、新たに見出した書簡の分析を通して、従来呈されてきた偽書の可能性を否定し、近世初期の連歌史上において看過できない重要な資料であるとの成果を得た。
|