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2023 年度 実績報告書

T4作戦をめぐる「想起の文化」と文学

研究課題

研究課題/領域番号 22K20019
研究機関三重大学

研究代表者

林 英哉  三重大学, 人文学部, 特任准教授(教育担当) (80966531)

研究期間 (年度) 2022-08-31 – 2024-03-31
キーワードT4作戦 / 想起の文化 / ナチス・ドイツ / 北杜夫 / ベルンハルト・シュリンク
研究実績の概要

ナチスの記憶と反省を後世につなぐ多角的試みである「想起の文化」において、文学はどのような役割を果たすことができるのか。この問いに答えるために、ナチスの障害者安楽死政策「T4作戦」を扱った文学に焦点を当て、被害者だけでなく加害者の視点を描くことができる点にフィクションとしての文学の価値があることを考察した。当該年度は、以下の3つの仕事を同時並行で進めた。
(1)T4作戦を取りあげた小説である北杜夫『夜と霧の隅で』(1960年)の分析を行った。これまでの論文で取りあげた作品(『アントン』『フーゴー』)では、被害者である障害を持った子供が中心になっていたが、北の作品では加害者である医師が中心になっている。ナチスへの抵抗が結果的に患者を殺害することに至った点に、加害者という属性について判断する際の難しさがあることを分析した。そして『夜と霧の隅で』について、加害者としての医師という観点から『フーゴー』と比較した論文をドイツ語で執筆し、現在投稿中である。
(2)「想起の文化」における文学をより多角的に捉えるため、同じく障害をテーマとしてはいるもののT4作戦とは異なった観点である、ベルンハルト・シュリンクの小説『朗読者』を分析した。読み書きができない障害を持つ加害者が、障害のない(読み書きができる)人間から罪を問われるという作品構造を分析し、社会的な格差の構造が読み書きという観点をつうじて表れていることを明らかにした。そしてドイツ語で論文を執筆し、発表した。
(3)所属している大学で「ドイツ文学と障害」というテーマで前期15回の講義を行った。その中でシュリンクの『朗読者』を取り上げ、学生とともに議論し、登場人物の間における読み書きをめぐってのマウントの取り合いという観点を得ることができた。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2024

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Alphabetisierung als Suehne? Analphabetismus in Bernhard Schlinks "Der Vorleser"2024

    • 著者名/発表者名
      林英哉
    • 雑誌名

      人文論叢

      巻: 41 ページ: 51-62

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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